8月9日、長崎は原爆の投下から71年となる「原爆の日」を迎えた。
長崎市の平和祈念式典は、安倍総理大臣や海外の53の国や地域の代表が参列して開式、原爆が投下された時刻の午前11時2分に全員で黙祷することを常としてきた。
長崎市の田上市長は、平和宣言で、アメリカのオバマ大統領が広島を訪問した意義に触れたうえで、核保有国の首脳らに被爆地への訪問を要請し、核兵器のない世界に向け英知を結集するよう呼びかけた。 今年も、同じ儀式が竣功され、滞りなく式典は終了した。
小生、特段の右翼でも、偏った左翼でもない。事実を冷静に述べてみたい。
広島・長崎と、人類史上唯一の戦争被爆国である日本、多くの犠牲の上で、核兵器の恐怖を経験している日本が、世界に向けて核兵器の根絶と、世界平和の構築のために訴え続けること、歴史的使命だと思う。広島・長崎はもちろん、安倍日本国政府も、全日本国民も当然、そう願い行動すべきだ。
が、しかし現実は全く違うのをご存知か?
「唯一の被爆国」として核兵器廃絶を主張しているはずの日本の政府は、核兵器禁止条約(NWC)締結の足を引っ張り続けている。
核兵器禁止条約とは、核兵器の開発、実験、製造、配備、使用をすべて禁止して、また、現在、保有している核兵器を解体して使えなくする条約のことである。
この条約ができたきっかけは、国際司法裁判所が1996年に「核兵器の使用・威嚇は一般的に国際法に違反する」とした勧告的意見をだしたことに始まる。これを受けて、1997年にNGOなど3団体が、「核兵器は違法」とする考えに基づいて、モデル核兵器禁止条約の案を発表し、同じ年にコスタリカ政府が国連に提出した。2014年末に開かれた国連総会で、驚くべきことに、「唯一の被爆国」を旗印にかかげ、核兵器の廃絶を目指しているはずの日本が、この条約の批准に棄権している。
アジアの核保有国である中国・北朝鮮・インド・パキスタンですら、賛成した、この核兵器禁止条約に、賛成しないのが「唯一の戦争被爆国・日本」であったこと、ご存知だろうか!
我国の、平和ボケした多くの国民は知らず、また優しすぎる日本人は、信じ難いことだと思うだろう。
2015年、ニューヨークの国連本部で開催された核拡散防止条約(NPT)再検討会議では、核兵器の非人道性が中心議題の一つとなり、オーストリアの提唱した核兵器禁止文書に107の国々が賛同したが、アメリカの「核の傘」の下にある日本は、アメリカに配慮して賛同しなかった事実がある。
核兵器による威嚇・核兵器の使用は一般的に見て「国際法違反である」という国際司法裁判所の勧告に、核保有国の米英仏ロはそろって反対ないし棄権だ。だから…日本はアメリカに追随して、核兵器を禁止すべきではないという立場を取っているのが「日本政府の実態」である。
日本は、国連総会でも毎年のように出している「核兵器の全面廃絶に向けた共同行動」決議を提案し、賛成多数で採択されたが、同決議は核兵器をいずれ廃絶しようという、お題目だけで、核兵器禁止条約の交渉開始を求めていない。日本お得意の「うまく形を創る・カッコだけ」レベルかもしれない。
何か釈然としない政府の対応は、これは日本国民の期待を裏切る、恐るべき事態にならないことを願うばかりである。
だから、今の世の中に、核兵器を禁止する条約は、未だ存在しない!
2016年8月14日
カテゴリー:飯島賢二のコラム