第701回 『全機現経営』とは・・・・・

 

我家の菩提寺は臨済宗・南禅寺派だが、同じ禅宗に曹洞宗がある。

その開祖である道元禅師の言葉に、「全機現(ぜんきげん)」という言葉がある。

どうも仏話はとっつきにくいし…と敬遠しがちだが、調べるにつれ、実に奥深い。

 

道元の言う「人生の意義」とは、

単的には…生き生きと生きよ。それこそ生きがいのある人生なのだ。そこで「生き生きと生きる」とはどういうことか。道元は、それは「全機現」であると言う。

それは「自己の持つ機能をすべて発揮することである」、全力投球ということである。

食事、遊び、睡眠、一服の煙草、一杯のお茶、の時でも「全機現」するのだという。

ゆったりと、しみじみと「全機現」するのだという。

そこに満ち足りた、しかも豊かな人生がある。生き生きと躍動する人生がある。

全力を尽くしたことによる満足感がある。

 

人々は現実には、常に「全機現」していないと言われている。

「全機現」とは、「全部の細胞・機能・技術・能力を現す・発揮する」という意味だが、通常、我々は自分の能力の15%程度しか使っていないらしい。

人は皆それぞれ、能力を持っているから、いかに「全機現」させるかがポイントとなりそうだ。

「全機現」できない、いや、しない理由は、自分自身のこだわりのようだ。

こだわりを捨てることにより、すべての能力が発揮される。

 

この「全期現」の考え方は、人生の生き方に限らず、企業経営においても全くその通りの指南書となる。企業のビジネスリーダーがマネジメントすべきことの中で、最も重要なことのひとつが、「自分自身をマネジメントすること」だと言われている。

自分をマネジメントできないリーダーに 部下や組織のマネジメントができるはずがない。

経営者自身の目標管理とそのチェック、自身の体調管理等々、禅の考え方から学ぶマメジメントとは、まず経営者自らのセルフマネジメントをしっかり行い、いつでも、自分の力を最大限発揮できるように準備することであろう。これはまさしく、「全機現」の状態と言える。

 

そして経営全体の「全機現」、例えば、「組織」においても、やみくもに人員を増やすのではなく、現在いる人に、もう少しだけ能力を発揮してもらうことにより、素晴らしい成果が出せるかもしれない。 

とすれば『全機現経営』とは、「今いる社員をフルに活かす経営」と言い替えることができる。

「社員」=「人」だけではない。 「物」・「金」・「時間」・「情報」等、我々の周りにある全ての経営資源を『全機現』させていくことにより、新たな活路も開けていくはずである。 

いつでも全力で「コト」に当たる姿勢、今、経営者に強く求められている。

 

アップル社の共同設立者の一人であるスティーブ・ジョブズ氏が、永年「禅」に取り組んでいたことは有名な話だが、実はこの『全機現経営』の提唱者でもあったこと、あまり知られていない。

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2016年10月2日IKG(~飯島経営グループ)
カテゴリー:飯島賢二のコラム


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