観光関連コンサルタントとして、20 歳代から全国を走り回ってきた。
その駆け出しの頃から、観光の地域経済波及効果の重要性を痛感、訴え続けもう 40 年近くなる。
ここ 10 年来、国もやっと観光振興の重大さを認識、最近では国の主要施策の一つとして位置付けて
きた。とりわけ地方創生の基になる地域づくりは、観光振興なくしてあり得ない、その主軸となり得る
考え方が、今注目を得ている。
それは、日本版 DMO(Destination Management/Marketing Organization)である。
従来の観光振興の担い手は、「行政」、「観光協会」、「観光事業者」の 3 者による観光振興が圧倒的
だった。しかし、景気低迷の上に地域間の競争が厳しくなり、この観光振興手法の成果が上がらなく
なった。なぜ、成果があがらないのか? その反省のもとに DMO という発想が生じてきた。
「従来型観光振興の問題点」をまとめると、まず、全体最適ではない。
自治体の活動は行政区の範囲を出ておらず、つまり、観光客という顧客志向ではない。
役所の移動があり持続しない。片手間仕事で、観光、あるいは地域づくり専門スキルを有するプロが
いない。目標不明確。責任を取らない。
これらをしっかり反省することから、地域振興策を確立しなければならない。
日本版DMOとは、地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する「観光地経営」
の視点に立った観光地域づくりの舵取り役である。
そのために多様な関係者と協同しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するた
めの戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人であり、その機能
そのもののことである。(観光庁ホームページより)
これからの観光は、地域へ「行こうよ型」から「おいでよ型」になり、地域主導とならなければいけない
と思う。つまり、住民や他産業を含めた「地域のみんな」が主体となる。
そのためには官と民、地域と地域、民と民の壁を除く「マネージメント機能」と、ゼロサム競争で地域間
競争が厳しい状況の中で、お客様に来てもらうための「マーケティング機能」が絶対不可欠となる。
そのためにはまず、日本版DMOを中心として観光地域づくりを行うことについての、多様な関係者の
合意形成、そして、各種データ等の継続的な収集・分析、データに基づく明確なコンセプトに基づいた
戦略(ブランディング)の策定、PDCAサイクル(Plan・Do・Check・Action)の確立等の事業マネジメント、
さらに、関係者が実施する観光関連事業と戦略の整合性に関する調整・仕組み作り、プロモーション
等の機能を果たす必要があると言える。
また、地域の官民の関係者との効果的な役割分担をした上で、例えば、滞在交流型旅行商品の企
画・販売や、観光案内や宿泊施設、レストランや現地の交通手段などの手配をする仕事、いわゆるラ
ンドオペレーター業務の実施など地域の実情に応じて、日本版DMOが観光地域づくりの一主体とし
て個別事業を実施することも考えられる。
日本型 DMO の成功事例は僅かで、現状の評価はまだ定まっていない。
まだ多くの課題もあるが、それ以上に大きな可能性を秘めている。
これからの観光施策の担い手、つまり日本経済の牽引役・DMO に大きな期待を寄せるところである。
参考:(公社)日本観光振興協会 第 6 回 DMO 研究会 観光地域づくりプラットホーム推進機構・清水真一会長談
2016年1月24日
カテゴリー:飯島賢二のコラム