第676回  ファイナンシャル・プランナー失格!

日本の高齢者の現実 「下流老人」とは?

「下流老人」という言葉を聞いた。 とてつもなく、いやな響きである。

経済的に満足した生活を送ることができない高齢者を、「下流老人」と呼んでいる。

生活保護者のうち、高齢者世帯は、79万8,609世帯で、生活保護者全体の半数49.3%を占めていることになる(厚生労働省 生活保護の被保護者調査2015年7月分概数)

厚生労働省によると、2014年の日本人の平均寿命は女性86.8歳、男性80.5歳、ともに過去最高を更新している。女性は世界一位、男性も第三位という、正に、日本は世界に誇る長寿大国だ。

ということは、定年退職後の第四の人生が永いということだ。

生まれて成人式までの20年の人生、社会へ出て一人前になるまでの20年の人生、成熟した生活を満喫し定年を迎えるまでの20年の人生、そして退職後、生涯を全うするまでの20年間の人生が「老後」として待っている。

 

老後までにいくら準備すればいい?

生涯期間の四分の一の、最後の20年、老後にいくら資金が必要か、気になるところである。

老後資金3,000万円説」と言われるものがある。

生命保険文化センターの「平成25年度生活保障に関する調査」によると、夫婦2人で老後の生活をする場合、ゆとりある毎日を送るためには、月額35.4万円の生活費が必要となる。

一方、厚生労働省が発表している厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額2015年度)は、月額22.2万円。この年金額だけではゆとりある老後を送るのは難しく、毎月不足額の13.2万円は自分で用意しておかなければならないだろう。

単純に計算しても、退職した後、亡くなるまでの約20年間で、3,168万円(13.2万円×12カ月×20年間)のお金が必要となる。これが「老後資金3,000万円説」の論拠である。

更に、万が一病気になったときの医療費、介護への費用等々、お金が必要となるかもしれない。

 

ファイナンシャル・プランナーとしては失格!

老後いくらかかるかは、人によってかなり幅が出てくるので、3,000万円というのは、ひとつの目安に過ぎない。 往々にして、さまざまな金融商品を薦めながらライフプランを提案する金融機関や、ファイナンシャル・プランナーと言われる人達の、絶好のセールス素材として活用される。

実は僕も、ファイナンシャル・プランナーの端くれにいる。

老後に必要な金額など人それぞれだし、何歳まで生きるかでも違うので、実は、『よく、分からない』というのが僕の見解だ。シミュレーションはできるが、正解は分らない。

20年間に及ぶ長期計画を、当初見込んだ通りに実施できると考える方が異常で、思いも寄らない技術革新が起こったり、柔軟に対処すべきなのはビジネスも人生も同じである。

いかにも無責任、無計画のように聞こえるが、イザという時の備えは、あまたある金融商品より、何としても「現金」がお薦め、お金を“鎖”につながず、自由にさせておくことがベストかもしれない。

生涯の四分の一の20年、対処力が高い生活を選択し、ラスト20年を謳歌してしまおう!

万が一に備えるばかりの人生では、現役時代が全く楽しくない…というのがその弁解である。

この論は禁句! ファイナンシャル・プランナーとしては、失格である。

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2016年4月10日IKG(~飯島経営グループ)
カテゴリー:飯島賢二のコラム


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