企業情報を読み解くには厄介な問題がある。
それは、「会社の数字は必ずしも真実を示しているとは限らない」ことである。
決算書というのは、聞きなれない会計用語がたくさん使われるし、しかも数字だらけである。
今まで触れたことのない人にとっては、非常にハードルの高い分野だといえるだろう。
しかも、決算書の数字は、たびたび嘘をつく。
悪質な企業は、粉飾決算や脱税など、論外なる脱法行為を時々行い、決算書を誤魔化してきた。
また粉飾や脱税までには至らなくても、合法ギリギリに決算を良く見せたり、その逆に利益を少なく見せたりすることは、「調整」と称して比較的良く行っている。その手口は、益々巧妙になってきた。
だから、決算書の数字を鵜呑みにしてしまうと、騙されてしまう事も多いのだ。
この2つの問題がネックになって、利害関係者は、中々企業情報を正確に読み解くことができないでいる。
例えば、負債の簿外計上(赤字隠し)、利益を余分に計上して赤字を少なく見せる、資産の過大計上(資産水増し)、収益の上乗せ(利益水増し)等在庫操作や経費操作があれば、損害を隠して経営状況を実際よりも良く見せることを目論んでいると見抜くべきだ。
会社が儲かっていないのに、儲かっているようにしたり、赤字が出ているのに、赤字が無いようにして外部に発表することを「粉飾」といい、不正に会計を操作する虚偽の決算報告のことである。
粉飾の手口とは、「売上が落ちているのに利益は横ばい」、「業界の景気が悪いのに利益が落ちていない会社」、「理由もなく利益が急増している会社」、「原価率」が急に下がっている企業は要注意、多額の借入金などがある場合や、特に上場を目指しているような企業に粉飾の可能性が高くなる。
粉飾は売上を大きくし、利益を増やすのだから脱税とは違い、それほど問題ない…と思っている方、
とんでもない! 立派な脱法行為である。
状況により相違はあるが、およそ以下のような罪が想定される。
社長の場合、会社法960条の特別背任罪、「違法配当罪」(会社法§963)、に当たる可能性がある。
上場企業の取締役が有価証券報告書の重要な事項に虚偽の記載をして提出したときは、「有価証券報告書虚偽記載罪」(金融商品取引法§197)。経理担当の人は銀行に対する背任罪(刑法 247条)か。
また、財産上の不法の利益をその会社に得させたとして詐欺罪(刑法 246条2項)にも該当可能性もある。
その他各方面に対する民事責任による損害賠償請求がある。
納税義務があると見なされている人が、その義務の履行を怠り、納税額の一部あるいは全部を逃れる事を「脱税」といい、その手法は、「売上を過少に申告するか」、「費用を過大に申告するか」の2通りしかない。
脱税は、憲法30条「納税の義務」を無視した行為であり、刑事事件なので、所得税法、法人税法などの各種税法に基づき懲役&罰金、もしくはその両方併科に処せられる。「前科一犯」という履歴になってしまう。
2010年6月に、29年ぶりに脱税行為に関する刑事罰を大幅に強化された。
法定刑の最高が懲役10年、罰金1千万円に増え、刑事訴追の時効が7年に延長、申告書の不提出や記帳義務の違反についても、罰金額の引き上げや懲役刑の新設で罰則の強化された結果、国税・検察当局が刑事事件として立件しやすい環境になった。
脱税で起訴された場合の有罪率、なんと3年連続・100%であること、お伝えしておく。
2015年11月22日
カテゴリー:飯島賢二のコラム