第669回 金融とITの融合「フィンテック」

金融業界を中心に「フィンテック(FinTech)」が注目を集めている。

拙筆「第667回のコラム」に続き、今回も近未来の新潮流について書いてみたい。

 

フィンテックとは、金融(Finance)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語で、最新のIT技術を使った新しい金融サービスのことだ。

これまでもITを活用した事例は数多くはあったが、フィンテックは、ユーザーの細かなニーズをくみ上げたサービスを実現したり、モバイル機器での金融取引を主流にしている点などが、従来の金融機関が提供するサービスとは異なっているようだ。

実際に実施されているサービスも含め、フィンテック例を整理してみる。

 

たとえば、「決済&送金サービス」。金融機関の口座番号を使うのではなく、SNSのIDやモバイルアプリなどを使って、個人間でお金のやりとりをすること。「LINE Pay」や「フェイスブックで送金」などが該当します。このほか、スマートフォン(スマホ)やタブレット端末をクレジットカードの決済端末として活用する「グーグルウォレット」「アップルペイ」なども。

更に「資産管理&運用」サービス。金融機関(銀行やカード会社、証券会社など)とネット上で連携し、資産を管理する。ライフプランに合わせた資産のシミュレーションができるサービスも。スマホの家計簿アプリ「マネーフォワード」は、この代表的なサービスの1つ。

また「投資&融資」。金融機関を介さずに、インターネットを通じて個人や企業がお金を集めたり、貸し出したりできるサービス。ネット上で不特定多数の人から資金を集める「クラウドファンディング」や、お金を借りたい人や企業と貸したい人や企業を結び付ける「ソーシャルレンディング」などがある。

そして「仮想通貨」。国や中央銀行が管理する通貨ではなく、オンラインサービス上で貨幣価値を持つ電子通貨サービス。ネット上の取引所で自国の通貨と交換・購入し、データでお金をやりとりするため、国際送金時などの手数料が安い世界中で日常的に使えることを目指した仮想通貨「ビットコイン」が注目を集めた。

 

コンサルティング大手、アクセンチュアの「フィンテックへの投資額調査」によれば、およそ10億ドル(約1,200億円)であった2008年の投資額は、6年後の2014年には約12倍の122億ドル前後(1兆4,000億円以上)まで急上昇している。日本国内の状況は、14年の投資額は約5,440万ドル(約65億2,800万円)。この投資額にも表れているように、フィンテックが欧米で急成長を遂げる一方、日本は「周回遅れ」とやゆされるほど遅れを取っている。

(出典:「THE PAGE」 http://thepage.jp/detail/20151209-00000002-wordleaf?page=2

 

新たなサービスの誕生に期待が高まるフィンテックだが、懸念点もある。

それはネットを介するということに他ならない。

前回コラムの「クラウドファンディング」も全く同じだが、常にサイバー攻撃のリスクが付きまとう。

預金口座の個人情報がネット上に流出したり、悪用されたりしないよう、より強固なセキュリティ対策は重要な課題であり、今後の未来社会に常に付きまとう、壮大なテーマである。

【参考資料】

 

(一般に、FinTech(フィンテック)によって生み出されたサービスは以下のような分類がなされます。)

スマートフォン(スマホ)決済、送金

小型のカード読取装置(ドングル)をスマートフォン(スマホ)のイヤフォンジャックに差込みクレジットカード決済を行うものなどがある。

また、LINEやWeChatなどのSNSも支払や送金のサービスを順次開始。

暗号通貨

ビットコインが代表例。「ブロックチェーン」と呼ばれる技術を中核とする。

ブロックチェーンは送金や支払の履歴を管理すると共に、銀行やクレジットカード会社のような中央集権的なデータベース基盤を必要とせず、分散して管理されることが特徴。

オンライン融資

楽天やアマゾンなどが参入を開始。担保や事業計画ではなく、ECショップにおける販売・決済データなどを基に融資を実行。

個人財務管理(PFM)

マネーフォワードが代表例。個人の銀行口座、クレジットカード、ポイントなどを一括で管理。銀行などの金融機関に代わって個人のポートフォリオを管理。

クラウドファンディング

ネットを通じて資金提供者を募るサービス。

投資、融資、寄付、購買などに適用されている。

投資支援

個人向け、又は中小企業向けのサービス。

市場動向やユーザーの投資性向に基づき最適なポートフォリオ運用をアドバイス。ロボアドバイザーとも呼ばれる。

経営・業務支援

会計関係のサービスが中心。システムをクラウド上に設置し、同時にクラウドソーシングを組み合わせた例が多い。

http://www.billingjapan.co.jp/service/fan_13.html

 

フィンテック

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2016年2月21日IKG(~飯島経営グループ)
カテゴリー:飯島賢二のコラム


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