東北新幹線がこの12月、八戸から新青森までつながる。地元では全線開業に向けて様々な取り組みが行われている。
その中で青森県経営支援課では本年度「観光商品企画事業」を執り行った。 これは観光関連事業者を対象に新幹線が開通したときを想定して、魅力ある商品を実際に構築し、その成果を公表することによって、いい意味での刺激を波及させようとするものである。
当初はそれぞれの企業が独自の商品を開発することでスタートしたのであるが、大部分が大きな壁にぶつかってしまった。そもそも零細観光事業者の多くが、顧客に対して他社と優位差別化のある魅力的な商品力を持ち合わせていないのが現実である。
したがって、今まで取り組んできた発想や方法を継続することだけでは限界が見えてくるのである。それならば、複数の事業所がお互いの弱いところを補うことにより、新たな商品を作ろうということになった。
つまりキーワードは「連携」である。
商品を開発する場合、顧客の旅行目的や動機を無視し、自分の都合だけで進めていくと、結果的には顧客に受け入れられないものができてしまう。青森県へのアクセスが便利になり、一時的に入り込みの増加は見込めるかもしれないが、その後も思惑どおりの数が確保できるという保証はない。
現時点で大手のエージェントの商品として構成されている旅館や旅行コース・観光ポイントは、商品のライフサイクルから見ると成熟期にある。
だからマンネリ化を少しでもなくそうと「生誕百年記念」だとか大河ドラマのゆかりの地だとかにかこつけての集中的な送客やイベントに頼る傾向にある。
しかしこれも商品の陳腐化が加速されるのでそう長く続くものではない。今、連携商品を築づくうえでの重要ポイントは、その土地ならではの「埋もれた本物」であり、まだ「観光の対象となっていない物事」である。
これこそがわざわざその地まで行く価値があるものであり、それを作り上げるのは新たな観光資源の発掘と棚卸しである。
そしてそれぞれが持っている小さいけれど他にはちょっとないものを連携商品として作り上げる。
このような発想から新幹線開業と同時に、新たな魅力ある青森を発信しようとしている。
| 2010年02月21日|
一泊二食という形態だけで旅館の収益を生み出し、かつ資金ショートをしないですむビジネスモデルを維持できている旅館が激減している。
バブル期には、まさかこのようなことになるとは誰も予想できなかったとはいえ、このハードを何とか活用し、必要な収入を確保するための知恵が今まさに必要だ。
昼食と入浴をセットで売る商品や、泊食分離といった発想は新しいものではない。 しかし、旅館は一泊二食があくまでも主流であり、このオペレーションを乱すものは、極めて消極的であった。だから、日帰り商品を扱っている旅館でも時間は三時間以内だとか、利用者にとっては制約が多く、とても日帰り専門の施設には及ばないものになっている。
商品の優位性としては、日帰り施設と旅館とでは「料理の格」が違うとか、イモ洗い状態の風呂ではないとすることを言うむきもあるが、いずれにしても収益の大きな柱とは成り得てはいない。
最近、ゼロ泊二食というパターンがマスコミに取り上げられているが、平日の稼動を埋めることと、このためにかかる経費とを天秤にかけているところが多い。
しかし、現実は客室の大部分が埋まるのは休前日のみ。平日は小手先のプランをいくら増やしても部屋は相変わらず空いているというケースが大部分だ。
ならば、旅館ごとの特性を活かして、新規対象顧客層の開拓に力を注ぐ必要がある。つまり今まで旅館に泊まりたくても泊まることがなかなかできなかった層に着目し、旅館自らその客層に踏み込んでいかなければならない。
数の上からはまだまだ少ない特定の客層をねらった宿。例えばペット可能、乳幼児づれ大歓迎、ハンディキャップ客対応が決め細やかな宿、食事制限対応が可能な宿、特定の趣味が高じてその世界が楽しめる宿、等々。
一見してそれ以外の客層からは敬遠される向きもあるが、同じ形態の旅館はそんなに必要ないのである。ならば新たな可能性のある顧客特性、つまりこれらの顧客には何が必要か?何が満足か?何をクリアすべきかを十分研究し、旅館の新たな商品として開発していく発想が不可欠である。
閉塞した時代には、自らその殻をやぶることが必須条件だ。
| 2010年02月16日|
エージェントと一応契約してはいるが、企画商品には載らない小規模旅館は数の上からすると、非常に多い。
送客においても、何かの拍子であふれたので、面倒みてほしいと言ってくる。このような旅館は、集客の計画も立ちづらく、営業データもそろっていない。だから、分析をするにも決算書等限られた財務データしかないという状況である。
さて、このような立場の旅館であっても、これから生き残るための手段を自ら構築していかなければならないのは、どこも同じである。
典型的なパターンを紹介すると、宿泊単価は一万円前後。年々入り込みが減少し続けている。付帯施設に魅力はなく、料理はほとんど団体向けの料理で変化がない。
地元金融機関においては運転資金を何度となく投じてきたが、改善の見込みがないため、コストカットを強く求めてきている。しかし、
経費削減を続けたところで限界があり、抜本的な集客アップ策が講じられないまま、今に至るというケースが多い。
デフレの時代だとはいえ、価格が安いというだけでは集客には結びつかない。低価格帯の旅館は競争が激しく顧客のコストパフォーマンスの良さが常に求められる。
最近勢力を強めている一部のチェーン店では、その魅力は首都圏からの格安なバスというアクセス上の優位性であり、料理の質はともかく好きなものを好きなだけ気軽に食べられるバイキングであったりする。
ところが既存の苦戦を強いられているところは、肝心な対象顧客のコストパフォーマンス上の満足感を全く計算することができないである。
何度となく述べてきたが、待っていればそれなりの客数を確保できる時代ではなくなったのである。たとえどのような料金帯であっても、客は旅館を選んでいる。
旅館はそれぞれの対象顧客が、旅館を選ぶ基準について、明確な予想をあらかじめ立てる必要がある。
これを商品のリニューアルの柱としていくべきである。「選択と集中」ということばは古い感があるが、何もセールスポイントを作り出せないのでは集客が減っても当然だ。自らが動き、旅館を変えていく力があるかどうかである
| 2010年02月08日|