国のある機関が中小企業五千社を対象に経営実態調査を行った結果、伸びている企業の八割以上に共通する内容があるという話を聞いた。
題して「成功企業七つの法則」というものだそうだ。
一見するとビジネス月刊誌の見出しのようだが、この結果は私見や編集ではなく、あくまでも統計結果であるという。
そしてこれら七つを同時に実行しているところがポイントであるようだ。
第一は明確な「経営理念」を持ち、これを従業員に「見える化」して会議や冊子等を通して浸透させている。
第二は「イノベーション重視」外的環境の変化を敏感に感じ、変化を歓迎し、さらに自らチェンジリーダーになろうとしている。
第三は「付加価値・差別化重視」この価値は購買者、消費者、自分、社会・地域・業界等の四つにわけて、自社が提供する価値をそれぞれ徹底的に考えている。
とりわけ購買者(買う人)と消費者(利用する人)をわけていることに注目すべきだ。
第四は「お客様重視」お客様は誰か?を改めて問い、顧客が購買を決定する際に重視する要素をノウハウ化している。
第五は「人づくり重視」誰にとってもすばらしい職場を創ろうとするのではなく、理念に合う者のみに、すばらしい職場を創ることを目指している。
第六は「計画経営重視」キャッシュフロー・収益性・生産性重視はもちろんだが、計画作成過程において、従業員も参加してビジネスプランを作成し、目標管理を行っている。
そして第七は「地域社会重視」地域の特性を活かしながら、地域以外の客層にも売れる商品を構築している。
また、地域に対する取り組みを通して、企業ブランド向上を展開している。
以上が成功している中小企業の共通する特徴である。
ひとつひとつは目新しい内容はない。
しかしここで注目すべきは経営者自らがこれらの内容を重視し、他社よりもより強固に実践していることである。
わが旅館では、これらの事項がどの程度実践されているかを自己診断し、重点強化すべき内容を検討するのもいいのではないか。
旅館業のエクセレントカンパニーが増えるのは大歓迎だ。
| 2011年07月26日|
会議で決まった行動計画が実行段階で未達となり、その後あいまいなままになっていくことが多くないだろうか。
そしてこれをいつも繰り返していることに対し、不満足だが仕方がないと言ってあきらめている。
これはPDCA(プラン・ドゥ・チェック・アクション)のサイクルがうまく廻っていないことを示している。
旅館経営のみならず、日常の生活においても、このPDCAがしっかり廻らないと、物事がうまくいかなくなってしまう。
これはいったいどこに原因があるのかを、まずもってはっきりさせることが重要である。
そのためには、行動計画と行動結果を綿密に照合することで大部分が見えてくる。
多くのケースでは、計画を立案したものの、その行動結果については検証が甘いまま、次の課題に取り組んでしまう。
これではまた同じ失敗の繰り返しになってしまう。
計画を細かく手帳やノートに記入する人は多いが、その結果を細かく記録し、そのギャップを検証している人は案外少ない。
実はここがPDCAを向上させる最大のポイントである。
うまくいかなくなるところはいつも同じ場合が多く、それがその人や旅館の癖となっている。
しかもそのことに気づいていないか、あるいは気づいていても放置しているのである。
自分の行動パターンに対してメスを入れることを、多くの人は好まない。
これが根底にあって無意識のうちに、「臭いものにはフタ」をし続けていれば、その結果は本人にいずれまとまって返ってくる。
自分は仕方が無いといってあきらめてしまう行動パターンなのか、自己やわが旅館を進歩させようという意識が高いかどうかは、今日一日の行動を振り返ってみればわかる。
今日一日の行動計画と結果の検証、そして課題の抽出と明日からの具体的改善方法を今日のうちに立てる。
それを踏まえた明日の行動計画を立案する。
この一日のPDCAを意識して行う事からスタートしてみてはどうか。
わずか一日である。
でも一日のPDCAが廻せないのに、長いスパンや大きなテーマのPDCAを向上させるなんて、決して出来るはずがない。
| 2011年07月19日|
活気がある旅館は訪問していてとても気分がいいものだ。
それとは正反対に、申し訳ないが玄関に入った瞬間に、もう帰りたくなる旅館がある。
玄関・ロビーというのは、単に施設面の商品力が出るだけではなく、その旅館の現状が集約されているような気がする。
これは旅館関係者のみならず、おそらく誰もが理屈抜きで感じる雰囲気であり、大部分が当たるものだ。
それを構成するものは、たとえばフロント係りの印象であり、清掃のレベルであり、照明や調度品の印象であったりする。
これらが客に対して発するものが、旅館内部の現状をよくあらわしていると思う。
さて、人はその内容よりも、数秒間の第一印象で相手を判断するといわれる。
実際自分がその立場にたったときは、そのように「勝手に」決め付けている。
実際、旅館のスタッフは客と長い期間付き合うわけではない。
夕刻から翌朝までのわずかな時間ではあるが、瞬間瞬間で、何をどう感じるかが、その旅館を評価することになる。
こんな当たり前のことを自問自答してみる。
そしてわが旅館が客にどう感じてもらっているのかというところから、改めて旅館の現状を見直してみてほしい。
冒頭に述べた活気のある旅館の共通点は、毎日、自分たちのオペレーションや提供商品が、これでいいのか?問題点は何か?もっと良くするにはどうしたらいいか?というテーマで議論し、より良い方向を目指して行動をしている。
だから、少しずつではあるが、毎日常に進化しているのである。
ところがそのような意識がまるでなく、日々の業務をただ黙々とこなすだけのマンネリ化した毎日を送っている旅館は、確実に衰退をしている。
他人や他館と比較する前に、昨日と今日の自分、わが旅館を比較することが先決だ。
そして毎日のように繰り返す、同じミスや物事の先送りを、断固自ら阻止する。
こういう自己に対する厳しさがあって、初めて提供商品に対する褒美が客からもらえるのではないか。
旅館を取り巻く外的環境の変化に取り残されず、その上を行く旅館を作り上げるためには、その旅館の経営者自ら変化していく以外ない。
| 2011年07月11日|
ある旅館の宴会場での出来事である。
訳あって別の旅館から転職してきた接待係りのA子さん。
理解が早く客への対応も良いことから、経営者自らが接待する宴席を担当することとなった。
上座の客に刺身皿を出そうとした瞬間、携帯電話が突然鳴り出した。
どうするかと思いきや、お膳の上まできていた皿を引っ込め、畳の上において、携帯電話を帯の中から取り出して、宴会場の外へ出ていってしまった。
唖然とする経営者たち。
あまりにとっさの出来事であったため、誰も言葉を発することが出来なかったのだ。
幸いにもその席は笑い話ですんだが、経営者一同、翌日には女将も交え大激論となった。
その結果、そもそも現場で起こりうることを想定した決まりごとが無いこと。
だからとっさの場合には、すべて現場のスタッフに判断がまかされ、人によって対応が異なること。
そして多くの場合、客ではなく、自分や旅館の都合を最優先して物事が行われていること。
女将が注意をしても、繰り返す人は決まっていること等が現実の課題として挙げられた。
ひとつの課題が顕在化した場合、それが多くの場面で繰り返されていると見たほうがいい。
この旅館は、現場で起こったこの事件を大問題だと捉えた。
だからハイスピードで改善の手を打ったのだ。
ところが全く正反対に、現場の課題について、適切な手を打たず、クレームを繰り返し受けるものの、結局何の改善も図ることが出来ないままの旅館がある。
当然ながらこの種の旅館は集客が年々減少している。
いくら営業ががんばっても、現場での対応に問題があるところは、結果として経営成績が悪化している。
幹部会議や営業会議を覗いてみると、決まって売上や集客ダウンの実績を指摘し「お前たちが悪い、何とかしろ」と言う類の言葉が出る。
しかし内部の課題を経営者自らが率先して解決していこうとする姿勢が見られないケースがある。
目が届いていないなら、目が届くよう工夫すればいい。
「うちは団体旅館だから」という言い訳で逃げてしまっていては、行き着く先は決まってしまうではないか。
| 2011年07月04日|