動線。
その名の通り、動く線つまり道のことなのだが、ホテル旅館業においてこの動線には2種類ある。
従業員動線と、客動線である。言わずもがなではあるが、従業員動線は従業員が仕事をする上で通る道で、客動線は客が通る道である。
この動線の組み方が実は大きくホテル旅館業では影響してくるのである。
当たり前なのかもしれないが、客動線はフロントから客室、客室から風呂や食事処といった道が中心になる。
大切なことはこの道々にいかに魅力的なコンテンツを用意するのかということである。
たとえば、売店の場合はこの客動線の流れに沿う形に持っていくことが大切で、一番は客室からフロントまでの動線の中に売店があることである。
チェックアウトの時に何気なく目にとまりそのまま売店で土産物を購入する。
わざわざ動線から外れているところに土産物を買いに行くお客は少ないからである。
また、この客動線に沿って、絵画や生け花などを飾るという形で、宿泊客にアピールしている旅館も多いが、匂いというのも重要で、この通りが変なにおいがしたりすると、それだけで雰囲気は台無しになってしまう。
いかに、立派な絵画が飾られていても、きれいな生け花があっても、臭いとだめなので、ここに匂いということも注目し、香を焚く等の工夫をしている旅館も多い。
次に従業員動線についてである。これは従業員が仕事をする上で通る道で、仕事効率を重視されたみちであるが、大切なことは、この従業員動線が客動線と交わらないということである。
どうしても従業員動線の中には、お客様の前に出せない部分が多い。
それが、交差することでお客様の目に触れてしまうと、それだけで、雰囲気は損なわれ興ざめしてしまう。
これを徹底的に行っているのが、東京ディズニーリゾートで、東京ディズニーリゾートの従業員動線はすべて地下にあり、交差しないようになっている。
もちろん雰囲気を損なわないために。
もちろん、今からすべての従業員動線を地下にということは無理な話ではあるが、いったん自身の旅館をこの動線という切り口から見直してみるのはいかがであろうか。
実際にお客になって館内を回ってみると、思ってもみなかった動線の交差が発見されるかも知れない。
その点を1つ1つ修正し、改善していくことによって、質の高い雰囲気を作り出せるのである。
| 2012年10月17日|
ホテル・旅館には、毎日様々なクレームが寄せられる。
厳しい意見もあれば、送迎をリムジンにして欲しいなど、真顔で言ってるのと疑いたくなるようなものもあるが、そのほとんどが、ホテル・旅館の都合上のことが多いように思われる。
団体客と個人客が遭遇したときの個人客側の意見などはその典型と言える。
チェックインや食事もそうだが、団体客と同時間に遭遇した場合、団体客をまず優先的に案内し、その後個人客への対応という流れになっているところが多い。
これは業界ではさも当たり前の対応だと言われているが、なぜいままでその方法がまかり通るのであろう。
旅行にはそれぞれストーリーや思いがある。
記念日に行く旅行だったり、ずっと楽しみにしていた家族旅行だったり、みんな非日常を楽しむために期待に胸躍らせて旅行しているのだ、それが、ホテル・旅館側の都合とはいえ、後回しにされたときどう思うであろう。
きっと、その旅行の思い出自体を大きく傷つけてしまうのではないだろうか。
しかし、もちろんそのようなことは旅館も承知しているが仕方ない場面も実際にある。
団体客と遭遇してしまう場合、人手が足りないなどの理由も存在することも確かなのだ。
ではどうしたらよいのか、それは様々な方法があるが、ある旅館では、女将自ら事情を説明し、お茶とお菓子をだし待っていてもらうということをしている。
これが大切なのである。
お客は邪険にされているのではないかと思ってしまうから、クレームにつながるのである。
そこを一言、大切なお客様ですということを示すことが重要なのだ。
実は、このような例はホテル・旅館には数多く存在する、オペレーションの一つ一つを見直すとホテル・旅館サイドの都合になっており、お客様のためになっていない場面が。
この部分を見つけるにはどうしたらよいのか、それは簡単なことで、体験してみればいいのである。
実際に、自分の旅館にお金を払って泊まってみればすぐにわかるのである。
1日は難しくても、たとえば、自分の旅館でお客様と一緒に食事をしてみる、お風呂に入ってみる、寝てみる、これだけでもいろいろな部分に気付くことができる。
よくお客様の立場に立って考えてみようというが、考えるだけではなく、実際に行ってみるとより効果があるのではないだろうか、もちろんその場合は普段着で行ってほしいものだが。
| 2012年10月17日|
様々な旅館さんへお邪魔させていただく中で、自分のところのホテル・旅館のことを本当にしっかり知っているのかと思うことがある。
ここは、経営戦略を立てる上でまずスタートになる部分である。
今回はその中からいくつか簡単に考えられるものを取り上げていきたいと思う。
まず、第一弾として、“客層”についてである。
自身のホテル・旅館のターゲット客層ははっきりしているだろうか。
これが経営戦略、または営業戦略を立てる上で重要なカギをもつ。
たとえば、料理についてである。
こんな話があった、ある旅館では、宿泊単価をあげるために夕食の食材の質を上げた。
それでも単価としてインパクトに欠けたので、もう2品増やし、高級本格懐石料理を提供するようになった。
モニタリングをしたところ、評判は上々で、意気揚々と主力商品に持って行ったのだが、いざ販売すると、評判は今一つであった。
そこで宿泊客アンケートを実施したところ、料理への不満が数多く寄せられてきた。
その内容は【量】についてそして【郷土色】についてであった。
その旅館は、山の中の高級旅館として営業していており、宿泊する客の多くは、富裕層、そして比較的高齢なご夫婦が多く、そして住まいは首都圏の客であった。
その客層に対して、今回の戦略はマッチしていなかったのである。
まず、1点目として年齢層から考える。
この旅館の主要客層である高齢のお客様はむしろ量を食べないのである。
確かに、料理の単価を上げるためには品数を増やすことが一番の近道ではあるが、この客層は量よりも質を望む客層である。
そのため、食べきれない、量が多すぎるといった意見が多く寄せられたのだ。
そして、2点目が首都圏からの客層であるという点である。
この旅館、料理単価を上げるために、山の中なのにも関わらず、伊勢海老、アワビといった高級食材を献立に加えたのだが、宿泊客からは、なぜ山の中の旅館で海の幸なのかといった意見が多く寄せられた。
献立にストーリが無いのである。
正直、ちょっとした高級食材は首都圏であればどこでも食べられる。
この客層が求めるものは、高級であるより、献立に物語のあるもの、地元ならではのものなのである。
今回の例は極端な例なのかもしれないが、自身の旅館はどんな客層に好まれているのか、そして、その客層のニーズに本当に適したものが提供できているのか。
今一度再考してみる必要はあると思う。
| 2012年10月17日|
今の若い人は、中々旅館に泊まりにいかない。
何でいかないのかを考える機会があった。
旅館にはあまり行った経験がない若い人たちだから、時にはチンプンカンプンで、およそ場違いな意見が出てくる。
でもだからこそ、既成概念にとらわれない、ユニークな発想になることがある。
今回はそんな意見を紹介したい。
題して「旅館に、あったらいいね!サービスである。
*24時間コンビニエンスストア
~人的サービスが無理なら、24時間自販機コーナー。旅館の冷蔵庫は高すぎると思っている人が多い中、自己防衛と称して持ち込みが目に余る。それなら、せめて…ということか、dwも便利かも。
*託児所
~ファミリーは楽しい。でも少しはご夫婦、二人だけの時間を持ちたいね。
*おしゃれな自分だけのアメニティグッズ
~持ち帰り用化粧セット、ちょいと高級。これも今日のメモリアル。帰宅後も、○○旅館さん、ありがとう!また行こうね。
*自分専用のスリッパ
~衛生上の問題を気にせずに、私だけで使えるスリッパ。もちろんお持ち帰りOK。これもメモリアル。
*客室で香広がる本物のコーヒーを
~客室に1台、家庭用カプセル式コーヒーメーカーを。インスタントでないコーヒーが飲めて、ラッキー。
*堂々とした、喫煙コーナー
~禁煙者から文句が出ない、逆転の発想で、完璧なデラックス愛煙空間を!
*ちょっと高くても…エステティックサロン
~ヤングレディにはもはや必需品。エステ効果に温泉効果、相乗効果でリラクゼーション!これで垢すりあったら韓国行かない!
*香
~お香、アロマテラピー、とにかく陰気な、かび臭い悪臭はたまりません。毎日中にいる旅館の人、臭い慣れじゃないですか?
*喫茶コーナーのポイント
~とびっきり美味しいケーキ、おしゃれで、かわいいスィーツが、何で旅館にあってはいけないの?
*お帰りにどうぞ、○○旅館のお弁当
~チェックアウト後のツアーに、ありがたい配慮ですね。もちろん有料でも、うれしいかもです。
ヤングレディ&ママ、言いたい放題だが、そう、簡単に無視ばかりでは、いけないかもしれない。
| 2012年10月17日|
100-1はいくつだろう。
普通に考えれば、誰もが99と答える。
それが当たり前ではあるが、サービス業においてはその通りではない、特にホテル・旅館業は。
2つほど実際に起こった話を書きたい。
1つは旅館業での話である。
女性二人組が東北のある旅館へ宿泊した。
その旅館はサービスに重きを置いており、接客係はもちろん、フロント、清掃スタッフに至るまで、挨拶等は徹底しており、その女性客はとても気分良く過ごせた。
料理もこだわっており、地のものを活かし大変満足した。
チェックアウト時には、接客係はもちろん、女将もお客様のお見送りに出ており、帰りも気持ちよく旅館を後にした。
しかし、問題は駐車場の担当係にあった。
旅館を後にした2人は、やや離れたところにある旅館の駐車場に車を取りに行った。
そこで、駐車場担当のスタッフが喫煙をしており、その吸殻を道端に捨てた、ポイ捨てをということである。その女性客は非常に腹が立ちそのスタッフにポイ捨てをしないように注意したということだが。
ここで、考えてみてほしいのは、その女性客は再びリピータとしてこの旅館に泊まろうと思うだろうか。
答えは否だと思う。旅館が一生懸命に誠心誠意を込めてお客様をおもてなし、調理長が丹精込めて食事を用意し、お客様のために真心込めたにもかかわらず、駐車場係のなんでもない行動ひとつですべて台無しになってしまったのである。
次に寿司屋の話である。
ある有名すし店に見習いとして就職した青年がいた。その青年は見習い期間中、毎日毎日、かっぱ巻きを作っていた。
多い日は、1日中何百本もかっぱ巻きを作っていた。そんなある日、出前先のお客から一本のクレームをもらった。かっぱ巻きにキュウリが入っていなかったということだ。
それに対して、寿司屋の主人は見習いを怒った。
すると見習いの青年は、今まで何千本とかっぱ巻きを作ってきた、1本だけでそんなに怒られるのは納得がいかないと反論した。
すると主人が、お前からすれば1000本のうちの1本かもしれないが、お客様にしてみればその1本がうちのかっぱ巻きのすべてになると。
この2つのエピソードより、100-1はサービス業においては99ではなく、場合によっては“0”になってしまうということが言える。
難しいことだが、サービス、ホスピタリティを高めるのであれば、お客様に係るすべての人間が、自分の都合ではなく、相手の立場に立って考えることをしなければならないのである。
| 2012年10月17日|