第400回 相手を知り、己を知れば 金融機関との交渉 ①
『敵を知り、己を知れば、百戦危うからず』という言葉がある。
中国の春秋時代の兵法家、孫子の言葉である。
これを今のビジネスに置き換えることができるのではないだろうか。
敵というわけではないが、相手のことをよく知ることよりはじめてみることが、経営の大切な要因と考える、現代の言葉にすると、『相手を知り、己を知れば、ビジネスがうまくいく』と言ったところでしょうか。
第一回は金融機関について考えてみたいと思う。
ホテル・旅館業には設備投資はついて回る問題である。
一定以上の生産やサービスの提供のためには、巨大な装置や十分な設備が必要で、成果や収益のためには新しい設備が必要であり、メンテナンスや修繕も含めると、常に大きな投資がついて回るいわゆる装置産業である。
そのため、金融機関との良好な関係は業界にとって必ず欠かせないのである。
そして、繰り返しになるが、金融円滑化法のため、多くのホテル・旅館がその法律の適用をうけ、条件変更をしてきた。
その法律の終了が目下3月末に迫ってきており、法律の適用を受けている企業は金融機関との交渉に入っているのである。
円滑化法の適用側、今回でいえばホテル・旅館側のメリットはすでにご存じだと思うが、円滑化法終了後の金融機関側からの見方を考えてみたいと思う。
まず、考えなければいけないのが「貸倒引当金」についてである。
金融機関は債権に対し、貸倒引当金を積む必要がある。
その金額は、債権先の企業の格付けによって、正常先、要注意先、破綻懸念先、実質破綻先などとなっており、それぞれの分類において何%というように決まっている。
もちろん金融機関にとってその引当率はまちまちではある。
例えば、破綻懸念先の企業に1億円の債権がある場合、だいたい5000万円から7000万円の引当金を積んでいるのである。
この負担はかなり大きいと言える。
じつは円滑化法対応中に関してはこの引当金の基準が緩和されていたのである。
そのため、円滑化法終了後は金融機関としては引当金をどのように積むかが大きな問題の一つになっている。
金融機関は、債権に引当金を積まなければいけない。
当たり前なのかも知れないが、このことを理解し、相手の立場に立って課題を克服する策を考えることが必要なのである。
そこで、大切なのが金融機関の格付けについてである。
引当金の額を抑えるには、格付けの基準を挙げることも方法として大切なのである。
次回は格付けについて考えていきたい。