観光・旅行業界にいつもいると逆に見えなくなってくるものがある。
消費者目線である。以前、この場で消費者感覚を忘れないようにということを書かせていただいた。
たびたび耳にするのであるが、旅行、特にホテル・旅館のこととなると、誰もが専門家のような、一見評論家のような感覚をもって話すことがある。
それは、誰にとっても旅行ということが特別で非日常だということ、それゆえ、期待値も印象も高いということである。
だからこそ何気ないことが大きなクレームにつながる。
そして、インターネットを通じて口コミという形で広がっていくという何とも苦しい循環を強いられている。
特に、口コミは昔は信用度が薄く、近しい友人などによる情報でもない限りは重要視されなかったが、最近では口コミによって旅館を選ぶといった傾向もあるくらいである。
言い換えれば、今まで以上に情報の伝達がいい情報も悪い情報もすぐに出回るということである。
そこで、もしクレームがあった場合の対処法を確認していきたい。
これはホテル・旅館に限った話ではないが、もしお客様からクレームがあった場合、最終的に良い結果につなげるということを帰着点として考えることが重要である。
そのためのポイントとして、まずお客様の前では、1部下任せ、たらい回しにはしないこと、2こちらの言い分は我慢して、相手の言い分を聞く、3迅速に対応し、丁寧に詫びるの3つが挙げられる。
そして内部的にはそのクレームを共有し、今後の発生を防ぐ方法を考えることである。
クレームこそ、売り上げ拡大のきっかけになるのである。
クレームが起こった場面は、いろんな形があるにせよ、その場面において普段気づかなかった場面であることが多い。
その場面を迅速にカバーすることにより、今後の発生を防げる。
つまりは、見つけられなかった減点箇所を修正できるのである。
また、最近では、ネットの口コミ欄に書き込まれるケースが多いがすぐに返信をし、丁寧に謝罪する。
ホテル旅館業は加点評価というよりは減点評価の意味合いが強い。
それは前述したように、非日常的でみな楽しみにしている、期待値が初めから高いからである。
それでもお客様は千差万別であるから減点場所はないとは言えないが、100-1=0にならないよう、また、なってしまうお客様を減らせるようクレームにしっかり耳を傾け、クレームをもらうということが明日の発展につながるのではないだろうか。
| 2013年05月24日|
さて、事業承継について4回ほど書かせていただいたが、実は多いケースとして『後継者は決まっているが、まだ学生(子供)だ』などといったケースである。
こんな場合は、後継者が大きく育つまで待つが、しかし時間がかかる。
また、後継者は息子に決まっているが、今は大手の会社に勤めていて、あと何年も戻ってはこない、または継がないかもしれないといったケースもある。
実は最近ではこのような悩みも解決する手段があるのである。
今回は事業承継の中で、後継者がいるが今から時間がかかるかもしれないといったケースに対応する方法を紹介したい。
その手段とは、平たく言えば人材紹介なのであるが、経営者に特化した人材紹介サービスである。
というのもこの時期になると、大手企業などでは決算からの株主総会等の時期になる。
すると、経営陣の大移動が始まるのである。
この時期を狙い、経営者の人材紹介は行われるケースが多い。
では、この経営者人材紹介はどの様な手段として利用するのかを具体的に考えていきたい。
比較的多いケースとしては、後継者が育つまでの期間に代わりに経営を行う中継ぎ・リリーフと呼ばれるケースである。
この場合、紹介される経営者は期間での契約となり、その期間経営を行う。
そのため、事業承継の時期やタイミングを調整できることとなる。
また、もし後継予定者が会社を継がないとなった場合の後継者候補として視野に入れられる。
次に現社長がオーナーまたは会長として第一線を退くケースである。
特に旅館業の場合、資産の多くが現社長個人に帰属しているケースなどが考えられる。
経営の第一線からは退きながらも、会長やオーナーとして会社に対しある程度の影響力は残せるということが考えられる。
最近のケースでいえば、現社長の右腕として手腕をふるうケースもある。
この場合、紹介してもらうのは、経営者ではなく、たとえば副社長候補者や取締役として紹介して入社してもらい、紹介者は今までの経営の経験などを活かし、現社長の右腕、番頭として経営に参画するケースも見られる。
いずれにせよ、経営者を紹介するというサービスがあるということ、そして、それを利用することにより事業承継をスムーズに行うことができるということ。
このようなサービスがあるということにより選択肢に幅を持つことができる。
大切なことは、きっちりと事業を承継する。
そのための選択肢は多くそろえ、検討の上最善であろう形をとる。
それこそが、事業承継の一番大切なポイントになると思われる。
最後に加えて最近では後継者の配偶者を紹介するサービスなどもあるという。
| 2013年05月14日|
M&Aについて、少し触れていきたい。
M&Aは本来企業の吸収と合併の意味である。
そのため、数年前までは、あまり良いイメージをもたれていなかったのが事実である。
しかし、最近ではそのイメージは大きく変わってきている。
それは日本全体が事業承継に悩んでいるなのかもしれない。
そこで、今回は、新しいM&Aの形を紹介したい。
紹介したいのが、後継者に悩む地方のビジネスホテルの話である。
規模としてはどこにでもある地方のビジネスホテルで、他との大きな特徴は無く、地元にある唯一のビジネスホテルとして経営を行っていた。
この会社をM&Aで買収したのは大手のエンターテイメント産業の企業であった。
このエンターテイメント産業は、宿泊施設を含めた総合レジャーを企画しており、そのための準備を行っていたが、一から従業員、教育、建物などを考えるとM&Aを使うことによりコストが軽減され、時間も大幅に短縮された。
それにより、ビジネスホテルはエンターテイメント宿泊施設へと変貌を遂げ、レジャー施設とともに大きく売り上げを伸ばしている。
元々の社長は株式の売買によって所得を得るとともに、会社から役員退職金をもらい、現在ではそれを元手に観光関係の新たな事業に取り組んでいる。
経営陣は地元ネットワークを持っているとのこともあり、ほとんどが継続でホテルに係っている。
ここで考えたいのが、売り手のメリットはよく取り上げられるが、買い手についてのメリットである。
具体的に考えれば、買い手側は、当然金銭等により相応の対価を支払うわけだが、なぜM&Aによってホテル・旅館を買うのかということである。
それは大きく2つの意味が考えられる。
一つは、事業拡大である。
新規事業に参入する場合そのかかるコストは非常に大きいと言える。
しかし、M&Aを活用することによって、0ベースから考えるよりも、効率よくスピーディーに新規事業を立ち上げることができるのである。
また、2つめとして現状のネットワークがそのまま手に入れることができるという点がある。
従業員はもちろん、地域ネットワーク、シェア、販路、顧客など0ベースから始めると構築するのにエネルギーがかかる部分をそのまま手に入れることができる。
もちろん、M&Aは必ずうまくいくわけではない、むしろ話の途中で流れることの方が多い。
しかし、企業存続のため、従業員のため、地域のため、事業承継の大きな選択肢としてその役割は大きいと言える。
次回は、事業承継の具体例として経営者の中継ぎについて紹介していきたい。
| 2013年05月14日|
今から6年ほど前、投資が盛んなころ、NHKのドラマで『ハゲタカ』というドラマがあった。
銀行と新興外資系投資会社が投資を巡って様々な対決をするドラマで、当時、手に汗握り、その中の人間模様に熱くなったのを覚えている。
あれから6年、その間にリーマン・ブラザーズの破綻、いわゆるリーマンショックがあり、当時のような投資市場は落ち着き様変わりをしている。
かつてのように、安く買いたたかれ、経営陣を一新し、他に高く売るというようなMBO(マネジメントバイアウト)はこと日本においてあまり見かけなくなったように思われる。
確かに、統計によると、日本の企業同士の買収や合併いわゆるM&Aの件数は2006年にピークを迎えているが、これを中小企業だけに絞ってみた場合、年々増加しているのが実情である。
なぜこのようなことが起こっているのか、それは、日本の中小企業の多くが後継者不足の問題に悩まされているからである。
そして、ここで行われるM&Aはかつてのような敵対的買収や企業の乗っ取りではなく、お互いがウィンウィンな関係になるようなM&Aが多い。
そこで今回は、現在のM&Aについて少し触れていきたい。
簡単に言えば、後継者がいない場合の選択肢として、他の会社に会社ごと売る。
これがM&Aである。言うは簡単ではあるが、実はここに様々な思いやドラマがある。
M&Aのイメージが昔とは違い、ウィンウィンな関係であるのは、この“思い”の部分が、様々な形で加味されるようになってきたからである。
例えば、創業者の特別な思い入れがある事業は継続して行うや、従業員は全員継続雇用して欲しい、経営からは退くが顧問や会長として対外的な部分は引き続き行う、自身の生活があるので退職金が欲しいなどが挙げられる。
もちろん、相手があることなので、こちらの希望がすべて通るといったわけではないだろうが、創業者や経営者の特別な思いを汲めるような、そしてお互いがうまくいくような形のM&Aが行われている。
また、買い手の側も、自身の発展の為にM&Aを利用するということからかつてのように差額で稼ぐというスタンスではなく、真摯に向き合うようになっている。
後継者不足に悩む日本の中小企業、統計によれば日本の中小企業の7割ははっきり後継者が決まっていないという。
そこで、後継“者”ではなく後継“社”という考え方もこれからは必要になってくるのではないだろうか。
そして、繰り返しになるが、お互いにメリットを享受できるM&Aの仕組みをしっかり作り上げることが今後の旅館業の発展に必要だと考える。
次回は、そのM&Aの具体的事例を公開できる範囲で書いていきたい。
| 2013年05月14日|
先日、90歳でこの世を去った三国連太郎さんの代表作『釣りバカ日誌20』の最後に、三国連太郎さん自身の思いが鈴木建設会長の言葉として映画の中で描かれている。
その中に、『この会社は、私のものでは無い。ここにいる経営陣のものでもない。株主のものでもない。君たち社員のものだ。』『…働いている人とその家族の生活を大切にする。これが企業の社会に対する義務だ。』(釣りバカ日誌20ファイナルより 一部抜粋)というセリフがある。
もちろん、商法上や税法上など、法的にという部分はあるが、企業のあり方を映し出しているセリフであると感じている。
事業承継の問題にはこの視点が重要である。
先週も書いたが、企業には続いていかなければいけないと考えた場合、事業承継をいかにスムーズに行うかは、どの企業も直面する必須の問題であると位置づけたい。
さてそこで2つのパターンで考えていきたい。
まずは、日本の中でもっと多い後継者が決まっていないケースについてである。
このケースでは、特にオーナー経営者の家族による経営の中で後継者がいないケースの場合どのようにしたらよいのかを考えていきたい。
1つ目は他の人が経営者になる場合である。
大企業などはオーナー(株主)イコール経営者ではないケースが多いが、中小企業の場合はあまり見られない。
資本と経営が分離していないのだ。
考えられるケースとして、従業員の中から後継者を決めるケースが考えられる。
この場合、当該旅館の内情には詳しく、経験も豊富ということで、後継としてはスムーズに行えるが、ネットワークの問題がある。
特に旅館業の場合、地元での古くからのつながりであったり、地元の名士である場合が多いのでいきなり経営者が変わった場合ネットワークを持たない場合が多く、難しいともいえる。
また、従業員の中からでは、感覚が変わらないといったケースもある。
旅館業に限らず、中小企業の場合、経営者がどのようなネットワークを築き持っているのかといった部分が、経営の中で大きなウェイトを占めるケースが多い。
また、感覚として従業員と経営者では全くちがい、時には時間に縛られず、無理をしなければいけない場合もある。
そのため、従業員の中から後継者を決める場合、業種による経験、ネットワーク、感覚といった部分がポイントになると考えられる。
教育をしなければということを考えると、後継者は早い段階で決定する方が良い。
その準備にあたり、最近では経営者自身の紹介を行う会社もある。
例えば、純然たる後継者候補を紹介してほしい場合もあれば、後継者は決まっているが、その教育期間だけ経営をお願いする中継ぎの紹介もある。
次回は、後継者は別の会社というケースを考えてみたい。
| 2013年05月14日|