以前、『敵を知り己を知れば、百戦して危うからず』という中国故事、孫子の言葉を紹介し、宿泊するお客の立場に立って旅館を見直そうという話をした。
これと同じように外国人観光客の立場に立って考えてみたい。
自分が外国に行ったときの事を考えてみたい。
どこの国に行ったとしてもその国特有の宿泊施設は必ずあるはずである。
しかし、私たちもその宿泊施設に泊まるであろうか。
ほとんどの観光客はホテルに宿泊するであろう。
それは、ホテルの持っている世界共通の品質やサービスには慣れているし勝手がわかるが故であろう。
これは立場が変わって日本を訪れる外国人観光客も同じなのだ。
つまり、勝手がわからない旅館、日本文化はハードルが高いのである。
では、何が外国人観光客から見てハードルが高いのであろうか。
これは、知人の外国人から聞いたのだが、一言で言えば旅館はすべてが知らないことだらけなのである。
もちろん、箸や畳などはなんとなくは知っているし、外国でも国によっては触れる機会もあるのだという。
実際に日本食のレストランは今や世界中にある。
しかし、実際に旅館の中で過ごすということは、外国人旅行者にとってはほとんどが未知の体験なのだという。
例えば、ごく当たり前のことであるが、座布団がわからないと伺った。
私たちはごく普通に座布団の上に座ると思っているのだが、外国人の話だと、クッションの上に座るとは思わなかったという。
このようなことが旅館の中にはたくさんあるのだという。
インバウンド対策を行う上で、数字の上の話や、外国人観光客が何を望んでいるのか、日本文化を存分にアピールするにはなど様々な思索がある。
しかし、外国人だから特別というのではなく基本的なマーケティングは同じなのである。
つまり、ターゲットを見込み、そのターゲットに対し的確にアピールし認知してもらう、そのためにはまずはターゲットとなる対象についてよく調べる。
まずは相手を知ることが第一歩なのである。
最後に、インバウンド対策のすばやい解決策の一つとして、外国人留学生のインターンを受け入れるという方法がある。
外国人留学生は、もちろん外国人なので日本人が気づいていない座布団のような例を指摘してもらえる上、繁忙の時はスタッフとして、そして外国人観光客を受け入れる場合は通訳としてもお手伝いしてもらえる。
留学生も日本の実際の現場で働けるということで非常にうれしいとのことでまさにウィンウィンな形となる。
この夏の繁忙期に外国人観光客の受け入れを検討するのであれば、ぜひ検討して見る価値はあると思う。
| 2013年06月26日|
先日京都を訪れた際に、修学旅行の小学生や中学生が、欧米人の観光客に対し積極的に話しかけ、一緒に写真を撮っている光景を何度か目にした。
何とも微笑ましい光景ではあるが、何を行っているのかと引率していたタクシードライバーに聴いたところ、修学旅行中の課題の一つに外国人に英語で話しかけ、コミュニケーションを図り、課題達成の証拠として写真を一緒に取るとのことだ。
外国人の評判は概ね良好とのことで、外国人旅行者は、日本人の子供と触れ合えてうれしいとの反応だという。
注目したいのは京都という街は、修学旅行生が課題を遂行できるほど外国人旅行者がいるのだ。
写真からでは日本人か外国人かどうか分かりづらいという理由から課題の対象にならないらしいが、アジア系の外国人旅行者を含めると多くの外国人観光客が来日している。
では、彼らは何を求めて、日本に来て、何を求めて京都に行くのであろう。
それは言わずもがな、『日本文化』を求めてである。
確かに、京都には日本を代表する文化が数多く存在している。
つまり、外国人旅行者が日本に期待していること、それはまさに日本らしさなのではないだろうか。
それは、日本人が国内旅行の際に、地域色を望むのと同じである。
しかし、多くの外国人旅行者が訪れる京都でも、旅館に宿泊する旅行者は限られ、多くはホテルに宿泊するという。
そこに注目していきたい。
以前も書いたが、旅館は日本文化の詰まった場所であることは言うまでもない。
部屋、食事、接客と日本特有のものが多く、日本文化を望む外国人旅行者から見ればまさにというべきなのであるがホテル泊を選ぶ外国人が多いという現実、ここにインバウンドの注目点があるように思われる。
言い換えれば、日本文化に興味はある外国人旅行者は日本の伝統的な旅館は、知らないか敷居が高いと感じているのではないかと思われる。
外国人向けの日本の紹介本、またはインターネットを見ても、もちろん紹介はしてあるが、旅館についての記述は日本文化の詰まった旅館に対し淋しいように感じられる。
もちろん、一旅館ではできない、行政部分によるところもあるが、旅館より何かを発信することも必要だと感じる。
そこで、次回は外国人旅行者の目線に立ち、旅館というものについて考え、そこから具体的な方法をみいだしていきたいと思う。
| 2013年06月20日|
少し前、2010年に発表されたJNTOの調査がある。
日本へ来る前に期待したことを尋ねると「日本の食事」(58.5%)と答えた人がトップ。
次いで「ショッピング」(48.5%)、「温泉」(43.4%)、「自然景観、田園風景」(41.8%)、「伝統的な景観、旧跡」(37.6%)と続いた。
同様にJNTOが2006年に行った調査によると、「日本の食事」と答えたのは19.4%に過ぎなかったが、2007年には36.5%、2008年には58.5%と、食が日本の観光魅力に欠かせないものになっているようだ。
「日本の食事」と答えた人に、特に満足したメニューを聞いたところ「寿司」(42.1%)と答えた人が断トツ。
このほか「ラーメン」(20.8%)、「刺身」(19.8%)、「天ぷら」(11.1%)、「うどん」(8.9%)だった。
「ラーメン」と答えたのは「台湾」(36.2%)、「タイ」「香港」(いずれも29.2%)、「シンガポール」(28.2%)、「韓国」(24.1%)など、アジアからの観光客が目立った。
一方、「天ぷら」と回答したのは「英国」(20.6%)、「フランス」(18.4%)、「米国」(17.8%)、「カナダ」(15.1%)など、欧米から来た人が多かった。
そして最新(平成25年1月~3月期)の全訪日外国人消費動向調査の結果が観光庁から発表されている。
それによると、訪日外国人が日本国内において支出した一人当たりの旅行中支出額は平均112,594円であり、前年同期と比べ微減の4.0%減となった。
しかし 訪日旅行の満足度は、「大変満足」39.5%、「満足」51.6%で、あわせて91.1%が満足している。
再訪意向は、「必ず来たい」52.2%、「来たい」40.9%で、あわせて93.1%が再訪意向という結果となった。
これは素晴らしい、高評価といえるだろう。
食が日本の観光魅力に欠かせないものになっているのは、間違いない、でもこのメニューの中で、旅館がどのくらい貢献したかとなると、なんとも分かりにくい。
トップ5のメニュー、「刺身」「天ぷら」は旅館でも定番だが、「寿司」「らーめん」「うどん」は、メイン献立から外れる。
食が満足度の主要要素をなすならば、93.1%が再訪意向という中に、「もう一度旅館へ泊まって、旅館の料理を食べたい」という希望は、ダイレクトに伝わってこない。
訪日外国人に、まだまだ「旅館」の存在は十分でないかもしれない。
旅館に泊まり、ヘルシィーな和食を堪能する、最も日本らしい「じゃっパン・クール」体験を味わってみたら、「ラーメン」より、もう一度食べたいものが見つかるかもしれない。
世界に向けて旅館の発信、和食の発信、彼らのより思いで深きジャパン旅行のためにパワーアップしなければならない。
| 2013年06月20日|
『なまら』『でーじ』『でら』『めっちゃ』『ばり』『えらい』『ごっつ』、これらの言葉は方言で、標準語では『とても』『すごく』という意味の言葉になる。
さて、ではこれが英語だとどうなるだろうかと考えてみた場合、すべてが『Very』になる。
ここが、日本語が難しいと言われる箇所の一つで、英語では『Very』という1つの表記が、同じ日本語でも、こんな小さな島国日本は言い方が様々である。
普段日本で生活している日本時には、方言の意味がなんとなくわかるが、これが外国人となると、非常に分かりづらいと思われる。
このことは、一つの例であるが、日本にインバウンドを迎えるということは、想像以上に大きな壁があり、それは営業、マーケティングの問題だけではなく上記のように我々が普段感じている言葉の壁以上の言葉の壁があるのである。
ところで日本の少子高齢化の問題を考えてみた場合、国立社会保障人口問題研究所によると、日本の人口は年々減少する傾向にあり、2045年過ぎに1億人を割るとの見通しが立っている。
きわめて単純な議論で考えれば、現在の人口を1億2千万人だとすると、1億円になると消費者人口も考えると、現在の売上よりも17%減少するということになる。
とても乱暴な話ではあるが、消費者人口が減るのも実際であり、それに伴い売り上げが減るということは明らかである。
そのため、以前より生き残り競争ということが注目されている。
つまり、言い換えれば、人口が減るということは、それぞれの産業分野において、淘汰されていくということなのである。
では、世界の人口をみるとどうであろうか。
国連 の2011年発表の World Population Prospectsによると、現在約70億人の世界人口は日本が1億人を割り込む2045年過ぎには90億人を突破すると予想されている。
つまり、日本の人口は約17%減少するが、世界人口は約30%増加するのである。
ここでまとめて考えてみたい。
非常に乱暴で、単純な発想で恐縮ではあるが、旅館で考えた場合、将来的には人口の減少に伴い、宿泊客も減り売り上げは減少する。
しかし、海外にも目を向けると、その部分を上回る宿泊客が待っているのである。
つまり、外国人観光客を獲得できれば売り上げの減少以上の数字があるということである。
もちろん、実際は以前も書いたが非常に難しく簡単な話ではない。
しかし、外国人誘致に取り組むということも今後の大きな道筋の一つであることは間違いないのである。
そこで、次回より外国人観光客への対応、インバウンド施策について考えてみたいと思う。
| 2013年06月06日|