第429回 感動を演出する
少し前になるが、ホスピタリティを実践するには宿泊客のことを理解し、そのためにコミュニケーションを取ることが重要であるということをこの場で述べた。
今回はそれとは別の視点で、宿泊客にホスピタリティを実践するために、宿泊客に感動を味わっていただくためにという観点より少し触れていきたい。
宿泊客に感動を味わっていただくためにということに基づいて考えた場合、一つのキーワードとなるのが『特別感』である。
例えば、食事の際、元々飲み物付の料理コースと、後から『これは当館からのサービスになります、本日は当館を選んでいただきありがとうございます。』と一言添えて持っていくのでは、同じ飲み物をサービスするのにも宿泊客の受ける印象が違う。
後者の方が自分だけという特別感があり、それがなんともうれしく感じるのである。
つまり、あまり良い表現ではないかもしれないが『演出』によって宿泊客の受け取り方は変わってくるのである。
大切なことは、その小さな特別感を味わえる演出を滞在中に何個できるかということではないだろうか。
さて、その演出ということについて、最近クリスマスはなぜわくわくするのかという話を耳にした。
確かに言われてみれば子供のころ、朝起きたときに枕元にあるプレゼントに何よりも胸ときめかせていた、それは誕生日プレゼントよりもである。
その理由は何なのか。
それは、枕元にあるクリスマスプレゼントには何をもらえるか分からない、いつもらえるのか分からないなどの不確定要素が多く、それがわくわくドキドキさせ、もらったときの感動を大きくするのではないか。
それを踏まえて考えてみたい。
宿泊客を集める、集客の観点から言えば、さまざまな魅力をアピールすることが必要不可欠である。
それは、広告やホームページ、チラシ等を使い、持っている魅力を周知させ、認知させるという活動になる。
だとするならば、それを見た上で選んでいる宿泊客は、すでにある程度当館の魅力を知った上で選んできているのである。
そのため、クリスマスの例から考えるに、感動してもらうためには掲示しているもの以上、あるいは掲示してない特別感を与えることが、感動への近道ではないだろうか。
そして、その小さな感動が10個、20個とちょっとずつ積み上げることが、ホスピタリティであり、選ばれるホテル・旅館へとなっていくのだと思う。