第450回 ハウステンボスに学ぶ②・社風

 前回に引き続き、長崎ハウステンボスの再生についてご紹介していきたい。

 前回はハウステンボスで取り組んだ『選択と集中』についてお話しさせていただいたが、今回は、再生を手がけている澤田氏が柱としていることを2つほど書かせていただく。

 もちろんあれだけの規模と大きな負債をわずか1年で黒字に転換するためには、これから紹介することだけではない。

 当然、紹介以外にも具体的に税金面だったり経費面だったりと取り組んでいるのは言うまでもないが、これから紹介することは従業員についてである。

 前回も紹介したが、ハウステンボス内を散策して気が付いたことに、『活気』というものがあった。

 18年間赤字続きだったがためかハウステンボス内はとてもアミューズメント施設とは思えないような暗い雰囲気が蔓延していたという。

 そのため、社長である澤田氏はまず、パーク内の人員の配置を集中させることにした。

 そして、さらには、従業員に対し2つのお願い・約束をしたのである。

 このことが結果的にのちに大きな成果を生むのである。

 まずお願いしたことは、ずばり『掃除』である。

 いい仕事は、いい環境からとよく言われるが、なかなか身の回りの掃除は習慣にならなければ。

 そこで、当たり前の要ではあるが、まずは朝一番に自分の身の回りの掃除から始めるように徹底をした。

 その習慣づけにより、意識の中に掃除をすることが当たり前になり自然とパーク内がきれいに、そして明るくなっていったというのである。

 そして、2つ目は『笑顔』ということだそうだ。

 なかなか毎日笑顔でいることは難しい。

 しかし、それを社長より徹底し、特に『つらい時こそ笑顔を作る』ということを意識的に行うようにしたとのこと。

 上記のような2つのことは、サービス業では当たり前のように言っていることではないだろうか。

 しかし、できていない企業が多いのである。

 それは、『掃除』『笑顔』ということが当たり前になりすぎてしまっているのかもしれない。

 もう一度、今一度見つめ直し、このハウステンボスの例にあるように基本に返り見直し、そして、徹底し、特に社長や経営陣はもちろん、中間管理職が率先して行う。

 このことにより企業の雰囲気が大きく変わるのだはないだろうか。

 現にハウステンボスでは風通しがよくなり、従業員同士でどうすればより良くなるのかを自然と考え実践するような社風になっているという。

 雰囲気を良くする、明るくする。

 これらは数字の上では出てこない部分ではあるが、企業の経営に重要な意味を持つ要因であり、そして、社長自らが先駆者となって行わなければいけないことなのではとハウステンボスに気づかされるのである。

第449回 ハウステンボスに学ぶ 再生手法

 企業を立て直す。

 いわゆる再生を行う上では、様々なポイントがある。

 以前から、お話しさせていただいているように、経営者が数字に強くなること、経営者の思いをしっかりすることなど、実務に照らし合わせた事例をいくつか紹介してきた。

 今回は最近ではすっかり有名な話ではあるが、ハウステンボスの事例について紹介したい。

 ハウステンボスは、長崎県佐世保市にあるオランダの街並みを再現したテーマパークで、1992年に開業した。

 当初は話題になり、来場客数は1996年までに右肩上がりとなり380万人を記録するまでになっていった。

 しかし、経営の状況は開業当初より厳しく、開業以来ずっと赤字が続いていた。

 ニュースにもなったが、2003年まで一度も黒字に転換することなく、ついには会社更生法の適用を申請し、野村ホールディングスが再生を支援するような形で経営に参画した。

 しかし、野村ホールディングスでも再生はできず、2010年に野村は撤退、変わってエイチ・アイ・エス(以下HIS)が支援することになった。

 その間創業以来18年間、経営はずっと赤字であった。

 HISの支援を受け、HISの現会長、澤田氏が社長に就任し創業から18年連続で赤字であったハウステンボスは、わずか1年で黒字に転換、直近の2012年11月から2013年7月期の連結決算では純利益56億円、決算での業績予想ではあるが100億円に迫るとされているほどの利益体質に改善したのである。

 では、澤田氏はどの様に18年間赤字であったハウステンボスを黒字に見事に再生させているのか。

 それは、難しいことではなく、ごくごく当たり前のことを徹底して行っているに尽きるのである。

 そのいくつかを数回に分けて紹介していく。

 まず、澤田氏が行ったことは、現状の分析とのことである。

 まず、現状のハウステンボスの中を一人の消費者として園内を散策し、消費者の立場に立った場合の課題を抽出した。

 それは、敷地面積・施設と従業員数が合っていないため、施設内にやっていないブースが多いということ。

 そして、経営状況に伴いなのか園内がどことなく暗い雰囲気だということである。

 そのため、澤田氏はまず、パーク全体の40%を無料エリアとして開放、残りの60%を有料ゾーンとした。

 それにより、無料エリアには、わずかな施設を残すのみとし、有料エリアに人員を集中したため、パーク全体に活気と明るさが戻ったのである。

 これは、よく言う『選択と集中』の代表例のような事案だと言える。

 さて、ここで自社を振り返ってみてほしい。

 今自社で無駄はないだろうか。

 徹底し消費者の立場に立ち自社を振り返り、無駄があれば選択をし、パワーを別のところに集中させる。

 これにより、雰囲気や活気が戻り、空気を変えることができるのである。

 次回も引き続きハウステンボス再生の手法を紹介していきたい。

第448回 他からの営業には優しく

 他からの営業には優しく。

 これは私が常々思っていることである。今回はそんな話をしたいと思う。

 デスクで仕事をしていると、色んな営業の電話がかかってくる、しかも頻繁にである。

 コピー機や電話は、いったい何を見て弊社にかけてくるのだろうかと思いたくなるような内容である。

 そして、そういう電話がある時は、タイミングが悪く正直に言えば厄介である。

 そのため、どうしても邪険に扱ってしまいがちではあるが、私はなるべく丁寧に対応しお断りするようにしている。

 それを紹介する2つのホテル・旅館の実体験エピソードを紹介したい。

 1つ目は、ホテルでの宴席の話である。

 小生の話で恐縮だが、私個人は仲間と趣味として太鼓を叩いておりその時は地元の医療法人グループの新年会の余興を頼まれた。

 その時に言われたことは、我々の太鼓一式を絨毯におかないでほしいとホテル側から言われた。

 なるほど大きな太鼓なので絨毯が傷んでしまうのは一理ある。

 しかし、我々の余興の時間までみんなで持っていてほしいとのことである。

 挙句の果てに、エレベーターはもちろん、業務用のエレベーターも使用させてもらえず、重い機材一式を階段で運んでほしいと言われた。

 いくら太鼓を叩く屈強な大人でも、さすがに1時間以上も手で持つこと、階段で機材を運ぶことは無理である。

 しかし、ホテル側は自身の都合を言うばかりで、我々のことは意にも解さずである。

 2つ目は、雑誌の取材の依頼の際の話である。

 仕事上、執筆・連載を行っており、多い時は月に数回取材の依頼の電話を掛けることがある。

 私は、意図的に予約の電話に掛けるようにしている。

 すると、始めは客かどうかわからないので、とても丁寧に対応していただけるのだが、取材の依頼だとわかると、手のひらを反してくるところも多い。

 いきなり、口調が変わり、中には怒りながら突然電話を切る旅館もある。

 断わっておくが、私の取材は費用はもちろん頂かない、一切無料である。

 そのような対応をされた旅館には、一生行かないであろう。

 少々愚痴っぽい話で申し訳ないが、どちらにも共通すること、それは『客ではない』ということであり、それが故に、対応が悪くなっているのである。

 しかし、考えてもらいたいのは、『客ではない』の前に、『今日は、』と付くことである。

 つまり、いつ何時、目の前の他人が消費者に変わるかわからないのである。

 経験則ではあるが、繁盛している旅館、評判の良いホテルなどは、客以外に対しても接し方が丁寧である。

 私はサービス業を営む上では当然と心得ると同時に、ぜひ自分自身を見つめなおしてもらいたい。

 客以外、納入業者や近所の人間、そして営業マンなどに対して、本人はもちろん従業員も客同様に思いやりを持って接すること。

 それこそが、明日の売上の第一歩であると気づいてほしい。

 最後に、できるなら弊社からの取材の際は優しくお願いしたい。

第447回 低価格戦略の失敗事例 テレビ番組

 マスコミに取材、取り上げられるとその効果は非常に大きい。

 特に、テレビで特集が組まれた場合、番組終了後から電話がなりっぱなしで、1~2ヶ月先の予約まですべて埋まってしまうなんて話も耳にする。

 とにかくその効果は絶大と言える。

 しかし、このテレビを使った広告宣伝には3つの問題がある。

 1つめは表示価格の問題である。

 テレビ等で表示される宿泊料金は、多くの場合1泊2食付の最低料金の場合が多く、また、○○○○円~といった一見すると一つの料金しかないように紹介されてしまう。

 旅館側としては、様々な商品があるにも関わらず、テレビの放映後はその価格帯が多く売れる。

 この商品の利益率がいい場合にはあまり問題は無いのだが、利幅の少ない商品の場合、他の商品は売れないと言うことよりを圧迫してしまい、結果としてものすごく忙しかったのに利益が残らなかったなんて話も数多く存在する。

 さらに最近では、その番組を見た人しか予約できない限定プランを作成して欲しいといわれる場合が多く、その多くが価格アプローチ、つまり、テレビを見て予約した人限定の安価なプランを作ってほしいと言われるのである。

 これでは利益幅はますます小さくなってしまう。

 2つめは上記の問題と関連するのだが、低価格商品を開発するために質を下げてしまうと言うことである。

 特に食材原価に関して安易に下げてしまうと、顧客満足度自体も下がってしまい、さらにいまやネットの時代なので、そのクチコミがあっという間に広がってしまう。

 ネットの恐ろしいところは、そのクチコミが残念な評価だとしてもなかなか消せないと言うことである。

 そのため、追加で言えば、忙しかったのに利益が残らず、その後の新規のリピーターの獲得につながらない上、ネットで検索された場合、悪評が閲覧されてしまいその後の新規客獲得が難しいという事態に陥ってしまう。

 3つめは時期の問題である。

 テレビとしても、ハイシーズン前に特集したい。

 その方が視聴率が取れるからである。

 しかし、ハイシーズンは旅館も好景気なので、比較的集客できる時期の場合、生産性の高い高粗利の商品も圧迫し、本来稼げたであろう部分も消えてしまう。

 そのための機会損失はかなり大きい。

 テレビや雑誌に取り上げられた場合、その宣伝効果は高いと言える。

 しかし、そのためには、事前にきっちり利益を生み出す商品を開発しなければならないし、そして、時期も検討し、なるべくオフシーズンに近づけることが必要となってくるのである。