第454回 顧客満足度

 数年前より、顧客満足度(Customer satisfaction通称CS)を重視するようにという声が多く聴かれるようになった。

 最近では、従業員満足度(Employee Satisfaction通称ES)という考え方もあり、要は、お客様そして、働いている従業員の『満足度』をいかに高めるのかということが企業の価値を高めることにつながるということだ。

 もちろん、従業員満足度を高め、その向上が顧客満足度につながるということはわかるのだが、今回は顧客に注目してみて行きたいと思う。

 では、どうすれば顧客満足度は上がるのであろうか。

 当然、日々の経営努力の一言に尽きるのかもしれないが、視点を変えて考えてみたい。

 お客様に満足していただくではなく、お客様が満足するかどうかなのである。

 つまりは、それぞれのお客様のニーズを満たしているのかということが重要であり、そのニーズは千差万別であり非常に難しいのである。

 ここで、ある顧客満足度の高い旅館の件についてご紹介したい。

 昨今インターネットの普及とともに、宿泊客の生の声、つまり口コミは簡単に伝わって、それが宿選びの一つの指標となっていることは言うまでもない。

 その旅館は、その口コミが非常に高いのである。

 口コミをみたお客はインターネットで当然その旅館のホームページをチェックする。

 当然のことなのだが、今や宿泊前にそのホテル・旅館をチェックするユーザーは96%以上だと調査結果が出ている。

 しかし、ホームページにはその口コミでよかったよ言われている箇所の掲載がないのである。

 実はこの旅館を訪問した際に、その個所について指摘をした。

 すると、旅館側からは、多すぎて載せきらない上、これをすべて載せるとホームページ自体がごちゃごちゃ複雑になってしまうとのことだった。

 しかし、これが幸いして思わぬ効果を産んでいるのである。

 お客は、ホームページに掲載してある情報や口コミを頼りにその旅館を選び、そして事前に知っている情報以上の物を得られているのである。

 つまり、期待値を大きく上回っているのである。

 ここで何が言いたいかというと、要は顧客満足度を高める要素の一つとして、期待値を大きく上回る、期待をいい意味で裏切るということが挙げられるのである。

 逆を言えば、ホームページや口コミで載せていること、取り上げられていることは当然知った上で来ている期待値だと考えると、それを下回った場合は得られる満足度として急落してしまうということなのである。

 つまり、キーワードの一つとして『期待値』ということが重要になってくるのである。

 そのため、自ホテル・旅館に何を期待しているのかをしっかり把握し、それを上回るオペレーション、サービス、アイデアを捜索すること。

 これが顧客満足度を高めるための一つの方法ではないだろうか。

第453回 消費者心理

 会社の社長でも、ティッシュ配りのアルバイトの学生でも、態度の悪い喫茶店のウェイトレスでも、警察官でも、医者でも、テレビのタレントさんでさえ、どんな人でもお客様になる。

 それが観光業、そしてホテル・旅館業だと思う。

 以前、納入業者だって、今は仕事上の付き合いかも知れないが、優しく接しておかないと、一歩出ればお客になる可能性があるんだからという話をした。

 特に納入業者の場合は多くの同業にも出入りしてる可能性があり、また、イメージだが情報を持っているケースが多いように思う。

 そのため、口コミなどには思っている以上に影響力がある気がする。

 要は、いつ何時消費者になる可能性のある業種は普段が肝心ということである。

 さて、前回より消費者が買おうと思う瞬間、業界で言えば、この旅館に泊まろうと思うためにはということをお話しした。

 今回は少し別の切り口から考えて行きたい。

 一つ話を考えてみたい。

 東京のある小さなカバン屋さん。

 小さな工房と店を構え家内工業で行っており、かばんはすべて社長であるお父さんのオリジナルで手作りである。

 平均して、1つ2万円位のカバンを売っていたのだが、近年の不況のあおりを受け、売れ行きは大きく減少、また、なかなか流行のスタイルを取り入れられず人気も低迷してしまっている。

 そこで、社長は今まで2万円だったカバンを思い切って、15,000円、10,000円と値下げをし、最終的には5,000円以下の商品も販売した。

 その結果どうなったであろうか。

 売れる個数に大きな変化は無く、むしろ値下げ分今まで以上に経営は厳しくなってしまった。

 そこで、思い切って金融機関より借入し先行投資の意味で店舗を改装した。

 そして、改装が終わった1か月後、同じ商品を陳列した。

 インターネットでも販売した。

 しかし、今度は2万円ではなく、同じ商品を5万円から10万円で販売を行った。

 知っている人からすれば何を考えているのかという話だが、これが、商品が完売になるほど売れたのだ。商品自体は元々いいので、価格を上げたことにより、ブランド力が付き、価格満足度も維持できたのである。

 ではなぜであろう、もちろん、立地やリニューアル等の条件はあるものの、こと価格に注目した場合、ここには消費者心理が大きく影響している。

 次回はこの具体例を検証し、実際の現場でいかに実践するかを紹介していきたい。

第452回 ゴールデンウィークより

 ゴールデンウィークを終え、一年で観光業の最大オンシーズンともいえる時期であったわけではあるが、傾向としてはどうだったであろうか。

 この原稿を書いている段階では概ね良好ではあったものの、いい時期に比べるとやはり減少傾向にあるように感じられる。

 その影響としては、やはり消費税の増税や日程の問題などが挙げられるのであろう。

 しかし、それはあくまでも全体の傾向であって、正直ななおかつ偏ったことをいえば、自分のところがもうかればいいのである。

 実際に、ホテル・旅館によって、差があるのも事実である。

 ということより、傾向としては減少傾向にあるのかもしれないが、その中でも自分のところは満館にしたい、満館になるためにはということを考えて行きたい。

 地域で観光客を呼ぶ。

 もちろん大切なことである。

 そのために、観光資源があるところのホテル・旅館では、地域としてイベント等に取り組み宿泊を狙う。

 しかし、これはあくまでも観光資源がある場合である。

 問題は観光資源に乏しいといった場合である。

 その場合キーとなってくるのが、前回お話しした『差別化』である。

 この差別化は徹底的に行った方が効果が高いということは前回で触れた。

 そこで、まずは、きっちりとしたターゲットを明確に打ち出し、そこに集中していく戦略を取ることである。

 例えば、このゴールデンウィーク等で旅行に出かけた際に、行き場所や宿選びのキーマンは誰であろう。

 多くの場合は母や娘、つまり『女性』である。

 では、女性がどのようにして旅行に行くかを考えてみる。

 もちろん最近では宿選びにインターネットは欠かさない。

 しかし、どこに行こうか悩んでいる場合に宿選びから検索をするかと思えば、おそらくはまず観光スポットからであろう。

 では、どうすればいいのか。

 つまりは需要を喚起させるということである。

 旅行をしようと思っている人は観光スポットのから探す。

 逆に考えれば、旅行の計画が無い人に、アピールをして旅行をしようという気にさせればいいのである。

 もちろん簡単なことではないが、観光といったん関係ない場面でアピールをするということが意外と効果的である。

 それは、ファッション誌などである。

 普段の日常パターンの中のふとした瞬間にあ、このホテル行きたいと思わせること。

 これがニーズ喚起なのである。

 もちろんこれは一つの成功例の話である。

 旅行を計画していなかった人が、旅行に行こうと決める場合は3月位だという。

 このように一つのターゲットを絞って差別化を行ったら、次は行動パターンを把握し、ニーズ喚起に集中する。

 こういったマネジメントこそが強みになっていくのではないだろうか。

 おそらく多くの旅館が、来てくれさえすればと思っているのだから。

第451回 ハウステンボスに学ぶ③ 差別化

 ビジネスにおいて、他社よりも人気を博すにはどうしたらいいか。

 これが市場の原則である。

 そのため、様々な場面で他社よりも優位に、他社にはないことをという形で、いわゆる『差別化』が行われてきている。

 しかし、この差別化は非常に難しい。

 というのも、多少の違いの差別であれば、劣位が優位の真似をし、すぐに追いついていくからである。

 そのため、この差別化は他に真似されない圧倒的でなければいけないのである。

 その中でも、業界内で圧倒的になる、いわばナンバー1になること、これをガリバー企業と言ったり、その戦略を戦時中の作戦の名前より一つの分野に特化し圧倒的になるということよりランチェスター戦略と呼ばれたりもする。

 さて、前々回よりハウステンボス再生の話をしてきた。

 まもなくのゴールデンウィークにあたり、ハウステンボスは日本の中の人気スポットの一つになっていることは間違いないであろう。

 では、今回は、ハウステンボス再生のマーケティングについて触れて行きたいと思う。

 テーマパークというカテゴリーの中だと日本には圧倒的なテーマパークが存在している。

 それは、ディズニーリゾート、そしてユニバーサルスタジオジャパンである。

 この両テーマパークは圧倒的なブランド力があり、そしていずれのテーマパークも大都市圏近郊にあるのである。

 そのため、集客力は他の追随を許さない強さを持っている。

 さて、ハウステンボスはどうかと言えば、ブランド力は両テーマパークにはとてもかなわない、そして、近郊周辺も長崎市で40万人強、佐世保市で約25万人、佐賀市でも約24万人と周辺の人口を合わせても100万人に満たないのである。

 この環境では、なかなかテーマパーク経営は厳しいと言わざる負えない。

 そこで、ハウステンボスで取り組んだことがナンバー1を目指す圧倒的な差別化である。

 言い方を変えれば、遠くてもわざわざでも行きたくなるような魅力的な場所、そうなるためには圧倒的な惹き付けるものが無ければいけない、それは他にはない真似できないもの。

 しかし、キャラクターやアトラクションでは差別化にならないと考え、ハウステンボスが取り組んだ差別化、それは『花』と『景観』であった。

 ハウステンボスには世界一が2つあるという。

 それは、『100万本のバラ』と『1000万個のイルミネーション』だという。

 この2つの世界一は世界中どこを探しても日本の長崎県のハウステンボスにしかない。

 だからこそ、多少遠くても足を運ぶのである。

 差別化ということに取り組むことは非常に難しい。

 しかし、他社よりもということを望むのであれば、日本一、世界一になり、真似できない、ここにしかないという圧倒的な魅力を作るということが必要である。

 中途半端な差別化はすぐに真似されてしまうので注意すべきである。