第479回 四季と旬
新年、あけましておめでとうございます。
本年も変わらぬご愛読のほどお願い申し上げます。
落語好きな私は新年と言えば、初詣に行き寄席に行くということを中学生のころからずっと年課にしている。
落語自体が好きということもあるが、なんといっても初詣の神社、そして正月の寄席の雰囲気が現代において何とも懐かしいいかにも日本の正月らしい雰囲気を味あわせてくれるから大好きである。
ふと考えてみると、クリスマスから一週間しかない中で、街の雰囲気を始め、色んな空気がガラッと変わるのは、当たり前のように何十年と過ごしているが、改めてすごいと感じる。
それだけ日本人にとって季節感のあるイベントは大切なことなのだと気づかされる。
言われてみれば、今年は10月のハロウィンも大きく盛り上がっていたことに驚かされた。
ハロウィン自体は昔からあったが、こんなに日本に定着したのは最近ではないだろうか。
日本の世界に誇れるところという問いに対し、もちろん様々な答えがあるが、その中で特に“四季”という答えに注目したい。
これは、日本の場所が四季をはっきりさせる場所にあるということだけではない、日本人は昔から、この四季と上手に付き合って生活をする風土・文化を完成させているということなのだ。
それに加え、新たに日本に入ってきた外国からの文化、クリスマスやハロウィンといったものもしっかりと生活にとけ込ませるという寛容さも持ち合わせ現代の日本の四季となっている。
さて、この四季はこと旅館業においては無くてはならないものである。
何よりも、窓から見える景色にも四季があるということから、旅館では季節感を出さなければいけない。
しかし、多くの旅館では当然季節感を大切にしているのだが、最近ではこの季節感がめちゃくちゃだったり、あるいは完全に無視しているなんて旅館もある、特に食事に関してである。
食事には四季、いわゆる“旬”が存在する。
確かに、物流や生産性豊かな現在では、世界中の物が輸入できたり、1年中同じものが食べられたりと発展しているのだが、旅の館である旅館では、せめて旬のものを出してほしい。
いつ行ってもアワビやカニというわけではなく、アワビにはアワビのおいしい旬の時期があるのである。
そして、この旬こそ、一番おいしいだけでなく、一番安い時期でもあるのだ。
今年の正月を迎え、世間の雰囲気を見ていて、日本人の四季、歳時記、そして旬というものを改めて見つめなおしたいと思った。