第291回 予約のスイッチを入れてもらうためには

 提供商品のレベルが高く、宿泊すれば多くの顧客が高評価を与えている。ところが経営状況は極めて厳しいという旅館がある。

 たしかに宿泊客のなかにはリピート客となる場合もあるが、当然それだけでは必要とする入り込み数には達することができない。だから、新規客が常に入ってこなければ経営がなりたたなくなってしまう。

 このような旅館に共通していることは、その旅館の価値を見込み客に伝え切れていないということだ。旅館としては最大限いい商品を提供していれば客は自然とついてくるという思いがある。また、おおげさな広告宣伝を嫌うむきがある。

 極端な演出もなく当たり前のことをきちんとやるという、すばらしい考え方のもと、日々実践していることに対しては拍手を贈りたい。

 しかし、提供商品のよさと集客実績には相関関係が成り立ちにくいのが現実だ。

 だから対象見込み客に対して、予約のスイッチを入れてもらうためのプロセスをよく考えてみることが重要だ。

 ではホームページなどでどのような告知をしているかというと、お決まりの温泉、料理、施設、そして宿泊プランといった切り口での自館紹介に終始する内容が非常に多い。

 しかしこれでは比較する見込み客の立場からすると、本当の意味でのその旅館の選択基準がわからない場合が多い。

なぜかというと、
どこも同じように見えてしまって旅館の提供商品の違いがよくわからないからである。

 だから、せっかく立派なホームページを作っても思ったほど集客に結びつかないということになってしまう。

 ここで一番重要なポイントは、見込み客が旅館に求めるものが先読みして提示できるかどうかである。つまり、旅館が提供商品を通じて顧客に対してどのような満足感を提供しようとしているのかを言葉で表現したい。そしてそれに対して顧客の共感が得られれば、予約のスイッチが入る可能性が一気に高まるのである。

 自ら作り出したそれぞれの宿のよさが素直に伝わること。これが集客に結びつく最大の要素だ。商品紹介だけでは人の心には決して響かないのである