第299回 スタッフのモチベーションアップがもたらすもの
料理を客に出すという行為。
これはただ黙ってお皿を客の前に出すのではなくて、器や小物の演出とともに、
食材・季節性・地域性・調理長のこだわり・調理の手間を客に告知することで、料理の価値が格段に上がる。
ならば料理だけに限定せずに、人的・機能的サービスや、施設のメンテナンス・清掃等についても、価値を上げるしくみがつくれないものだろうか。
スタッフが旅館や客に対する特別の思い入れがあって、それを客の見えないところで懸命に実践しているという事実があれば、そのことを客に告知するという試みについて考えてみたい。
つまりあえて「スタッフが主役」という場面を作り、その考え方や動き方に客の共感を呼ぶというストーリーである。
告知の手段としてはホームページや客室に置くご案内帳が最適だが、くれぐれも「こんなにやっているのだ」と、いやみにならないようにすることが肝要だ。
さて、実際の手順だが、まず一日のスタッフの業務の流れと具体的な内容をシートに落とし込む。
そしてそれぞれの場面で客によりよい商品を提供するために、努力・工夫をしている事柄を逐一ピックアップしていく。
そしてもっとそのレベルを上げていくにはどうしたらいいかをスタッフ全員で検討していく。
これが提供商品の継続的な質的アップとなっていく。
この業務改善の取り組みが告知され、スタッフの業務と顔が客先の前面に出ることにより、スタッフの張り合いと同時に責任感も上がるようになる。
スタッフのモチベーションアップは、旅館経営を円滑に進めていく上で、実は極めて重要な要素である。
施設、料理で集客アップが難しいなか、スタッフのモチベーションという、今まであまり表に出てこなかった要因について、経営者が戦略的に改善を図るという視点は、旅館の集客アップにもつながっていく重要な要素である。
厳しい経営環境のなかにあって、旅館が勝ち残っていくためには、円滑なキャッシュフローや集客アップ策についてのノウハフが不可欠である。
しかしこれを実現するためには、旅館を支えるスタッフのモチベーションなくしては成し得ない。