第301回 セミナー受講者に現れた心構えの差
旅館に対して公的機関や金融機関が、経営指導や各種講習会の提供サービスを実施している。
それらの大部分が無料ないしは格安で受けられるものである。
ちょうど今頃は来年度事業の概算がほぼ決定し、詳細内容について詰めている時期だ。
担当者の立場としては、何としても多くの事業所に参加してもらいたいと思っている。
ところがせっかくこのような企画をたてても、思うように集客ができないで頭を抱えているケースも多い。
先日も地方の信用金庫が旅館向けに経営改善のセミナーを企画し、お得意先の旅館に受講を呼びかけた。
数多くの旅館の資金需要に答えてきたこの信用金庫は、何とかして貸出先の旅館の経営状況を改善させたいという思いがある。
そのような事情から、観光関連事業所に対する経営改善の側面からの支援を積極的に行っている。
ところが受講料が無料であるにもかかわらず、受講する旅館は少ないと担当者は頭を抱える。
なぜ、受講しないのかとある旅館経営者に聞いたところ、いまさらセミナーを受講したところで経営改善にはつながらないと、最初から結論付けている。
セミナーの主催事務局は、立場上受講者を相当数集めないと格好がつかないため、「付き合いだから」と受講するよう依頼する。
実はこのような経緯を経たセミナーは講師の立場からすると、すぐ察知する。まず、開始時刻になっても集まりが悪い。
講義中もうわの空。質問もない。そして終了後は受講者同士でまったく別の話題で盛り上がるというパターンだ。
これとは全く対照的に、公的なサービスを活用している旅館もある。常に問題意識を持ち、経営者のみならず従業員も積極的に講習に出席する。
そして必ずその結果得たことを旅館のミーティングで出席者が講師役となってレクチャーしている。
これが定例化しているから、受講者の意気込みが全く違うのである。
この旅館は、顧客の情報共有や業務改善についても同様にモチベーションが高い。
仕方なくやらされているというのと、何かを吸収しようという心構えとでは、同じセミナーを受講しても、全く効果は違ってくる。
そして物事に対する取り組み姿勢は経営成績に反映していくのである。