第260回 外的環境の変化に立ち向かう体力を作れ
新年を迎え、旅館経営者の思いはさまざまであろう。景気動向や観光政策、金融政策等旅館を取り巻く外的環境要因は極めて不透明である。
各金融機関の共通の声として聞こえてくるのは、業種を問わず三か月先の売上の目途が全くたっていないところが圧倒的に多いという言葉だ。
旅館においても同様である。かつてはある程度見込みがついた大型の団体があり、季節変動の波も予想がついた。だから、資金の手当ても早めに金融機関に相談し、それがいつ返せるかも目途がついていた。
ところが昨年を振り返ってみると、高速道路のETC割引やインフルエンザ、円高に一喜一憂し、外的環境の急激な要因に振り回された感がある。
このように自分たちでは解決できないような波が、今年も現れるものだと思っていたほうがいい。それは何か正体は不明だが、肝心なことは、少々のことではぐらつかない体力をもつことができるかどうかである。
資金繰り対策に終始している旅館は、あいかわらず同じことの繰り返しで自転車操業が続いている。何とか金融機関の借入や経営者自らの資金投入、コストカットや支払いの延期等で、目先の資金ショートの回避を続けてきたところも、その旅館自体の体質が変わらなければ、いずれ失速する。
近年、自然災害が温泉地を襲った例があった。この地域は一様にダメージを受け、施設を一時休館をして改修しなければならない事態となった。さらに追い討ちをかけるように、その地域一帯の入り込みが激減した。
それから半年以上がすぎ、災害の影響がなくなりつつあるときに、息を吹き返してきた旅館と、あいかわらず沈んだままの旅館とに大きく分かれてしまった。
これはあくまでもその地をおそった自然災害がきっかけとなっただけで、衰退の根本原因は旅館の内部にあるのである。
外的環境が厳しいのはどこも同じだ。要はその変化に立ち向かうだけの内的体力を自ら作り上げる以外には方法はない。
内面を突き詰めてみれば、なるほど経営悪化の要因が客観的に見えてくる。これを直視し、自ら先頭に立って変えていく熱意が、経営者にとって不可欠の一年となる。