第304回「小グループ客」という存在を見極める

ある旅館の営業戦略会議にオブザーバーとして出席した。

今までは、収支や入込み計画と実績の差異を出し、その分析と次月以降の計画達成のための行動予定を確認していた。

 しかし、これを繰り返していても、抜本的な改善にはほど遠く、「やり方が間違っているのではないか」と、経営者が一言。

 そこでこの旅館の売上実績を再度分析してみようということになり、顧客を組み人数別で「個人客」「小グループ客」「団体客」の三パターンに分類した。

そして月別に売上、宿泊単価、二次消費単価、総消費単価、人数、構成比を数字に落とし込み、傾向を探ってみた。 
 
その結果、個人客はネット系および自社ホームページ上からの集客が確実に伸びている。宿泊単価は最も高いが、二次消費が低い。

 団体客は旅館の直営業が獲得している団体だが、価格競争の影響を受け、宿泊単価の低下が著しい。
二次消費はまずまずだが、宿泊単価の低さが足を引っ張り、総消費では思ったほど伸びていないことが分かった。

 一方、「小グループ客」は宿泊単価が個人客に追随し、二次消費額は最も高かったのである。

 この結果、最も歓迎すべきカテゴリーは五人から一〇人程度の「小グループ客」であることが明らかになった。

 ところがこの旅館では、個人客と団体客向けの企画プランや営業方法は確立されているが、小グループ客に対しては、実際何もしていなかったのである。

 そこで「小グループ客」向けの商品をいきなり考えるところであるが、その前にこれらの客について、「予約カテゴリー、宿泊目的、料理ランク、人数、単価および現場でのヒアリングや観察」といった内容で実態調査を行うことにした。
 
小グループ客は、同窓会等の記念日や、毎年の集まり等、宿泊目的が明確な場合が多い。

ならばそれらのカテゴリー別に、さらに喜んでもらう商品やサービスを展開することで、積極的な営業展開が可能になるのでないかという目論見だ。

 たしかにバス数台で訪れる団体客が激減し、個人客にシフトしたということで、どこの旅館も個人客狙いの提供商品になりつつあるが、いま少し、自館の顧客分析を行うことで、他館とは異なる提供商品と営業展開をする必要がある。