第307回 客にとって魅力ある企画商品なのか?
ある旅館で商品企画会議に参加した。前年のチラシをもとに加筆修正をしたものができあがりつつあるところで社長から「待った」がかかった。
一度すべてリセットして全く新しい発想で商品をつくっていこうということである。
これには毎回プランを作っても計画通りに売れたためしがないという背景がある。
ちなみに他の旅館がどのような商品を出しているかをネット検索してみた。ほとんどが「企画」あるいは「プラン」という名称を使い、見れば見るほどその差が分からなくなるものばかりだ。
今回、この旅館で力を入れようとしているグループ客向けの「記念日商品」においても同様だ。
記念日と称しながら大半が料理内容の説明で記念写真を有料で撮りますというわずかばかりのソフト対応がついているにすぎない。
結局はプランの数が増えるとともに、料理の内容も多岐に渡り、厨房がパニックになるだけである。
要するにソフト面の特徴にはほとんど手をつけず、料理の内容でバラエティさを出す方向に走っているのである。
客から見れば、記念日を演出してくれる提案がないため、結果的に料金交渉で選択が行われる。これでは利益の生まない商品をつくって販売する従来の繰り返しと
なってしまう。
そこで料理のバリエーションはあえて極力変えず、記念日には何をしたら客に喜ばれるかをテーマに商品開発を行うプロセスを提示したのである。
今、客から見れば横並びの商品を提示している多くの旅館の中からどこを選ぶかは、施設と料金と口コミの要素が大きい。
目に見えない人的サービスや料理は、体験して初めて評価が得られる。
もちろん地元であれば、それぞれの評価が定着しているところであるが、客の心を捉えるものは、利用目的を明確に把握したうえでの旅館側の対応姿勢にある。
わが旅館ならではの客に対する提供サービスを構築し、展開していくことは集客アップにおいての原点である。
客の共感を得ないプランの羅列では、売れない商品を掲示しているにすぎない。
出来上がったプランのチラシを手に取り、旅館名を隠してみたら、自館の特色が一目
瞭然に分かるだろうか。