第311回 ぶれてはいけない意思決定の判断基準
毎月定期的に訪問している中規模の旅館がある。
この旅館では、1ヶ月単位で各部署の課題を抽出し、改善のための方向性と具体的な対策を決め、行動に移し、その結果を検証している。
この1ヶ月サイクルのPDCAを繰り返すことは、旅館全体のレベルアップを図ることが目的であり、その機軸は「顧客により喜んでもらうことにつながるか?」という判断基準で意思決定をしている。
月1回の会議では、前回の宿題の確認からスタートし、実施状況や結果の報告の後内容について協議が行われる。
ここでいつも出てくるのが、動きが早く、結果が出て次の課題に取り組む部署と、いつまでも同じことを繰り返し、全く先に進まない部署の差である。
最終的な指示は、その場で社長が直接下す。案件の内容はそれぞれ異なるが、与えられた期間等の条件は同じである。
しかし、1ヶ月前に担当責任者本人も同意のもと、決めたことがいっこうに進んでいない部署の報告を聞いていて共通することがある。
それは①与えられた課題を克服するための1ヶ月間における行動計画がたてられていない。
②間際になって慌てて行うので、思惑どおりにことが運ばず、結果が伴わない。
③ずさんな結果を報告せざるを得ず、その理由を問われて、他人や周りの環境のせいに責任転嫁する。
④繰り返すパターンに、その責任者に対し、周りからの信頼はすっかりなくなり、結果として組織としての円滑な動きが損なわれる、というサイクルだ。
この担当者には以前から社長自ら厳しい指摘をするとともに、何度となく挽回のチャンスを与えてきた。
しかし結果として本人はその考え方や行動パターンを変える気がないのかそれともできないのか、今もって変化がない。
この人に対する社長の判断は、部署の異動であり、それでもその部署で期待される結果がでない場合は、退職である。
その理由は、顧客により喜んでもらうため自分が行うべきことをまっとうできないからだ。
この判断基準は極めて明快であり、顧客・旅館・本人の全てにとってベストな洗濯だ。