第317回 誠意を示すということ
正常な旅館営業ができない毎日が続いている。
計画した売上が全く立たないなか、支出も工夫していかなければ資金繰りが成り立っていかない。
そこで金融機関のリスケや各方面への支払猶予に奔走している経営者も少なくはないはずだ。
ここは誠意を持って支払い猶予のお願いをすることで、理解が得られることを期待したい。
しかし、なかには何の連絡もないままに、業者への支払いを勝手に延ばす、つまり請求書に基づく振込みをしないでほったらかしにしているという話を聞いた。
納入業者の立場からすれば、何の連絡もなければ通常通りの支払いをしてもらえると思っている。
それを前提に資金繰りを計画しているはずだ。
支払いを延ばすことよりも、キャッシュフローの計画が狂うことのほうが痛い場合もある。
このようなことは、対金融機関についても言える。
運転資金が必要になった場合に、急にしかも計画書なしの申し出は、金融機関の担当者にとって取扱がむずかしい。
例えば普段から試算表を毎月提出し、経営状況を報告していれば、担当者もその旅館の中身を理解してもらえる。
取引業者についても同じことが言える。カネを払ってやっているのだからと、あごで使うような態度をしている経営者は、一旦その状況が悪化すると、だれも支援はしてくれない。
自分が困ったときだけ助けてくれというのは、どこの世界でも通用しないのは明白だ。
こんな単純なことを、なぜ理解していないかといえば、その経営者は裸の王様になってしまって、注意してくれる人物がだれも周りにいないからである。
世の中はいろいろな制度の下で成り立っている。この仕組みのもとでビジネスが展開されていることはたしかである。
しかし、それを運用しているのは、生身の人間であることを忘れてはいけない。
「この人のためなら何とかしてあげよう」こんな気持ちになる経営者には、予想もつかないような支援が得られるケースを見てきた。
人間は緊急事態になると本性がでる。その人に対する評価が形になって現れるものだ。
自分さえよければいいという、甘えの考え方は早急に捨てること。
今まさに必要なことだ。