第322回 再度ホスピタリティについて
先週に引き続き、ホスピタリティについて述べたい。
画一料金の旅館や廉価でシステマチックな居酒屋がなぜ受けているのか?
これは家族4人で利用したときの総予算、素材はともかくどの世代にも対応したメニュー構成、多少子ども騒いでも、気にならない雰囲気と環境。
そして魅力的な送迎サービスというラインナップ。
これはターゲットが欲していることを提供し、そのことに対して共感する客が支持しているからである。
これらの旅館には、それぞれの顧客に合わせた臨機応変のホスピタリティはない。
むしろ、はじめからルールが明確になっていて、その内容を良しとした人のみに来ていただきたいという、価値がわかりやすい仕組みがある。
この仕組みは、その客層のライフスタイルや価値観を徹底的に調べ、多くの満足を得るだろうというマーケティングがベースになって、サービスの仕組みを作り上げている。
一方で日本の文化としてのおもてなしの心を最大の商品とする伝統旅館も存在し、高級ホテルの手本となっている。
多様化し、常に変化する価値観はまさに人それぞれだ。
意見や考え方もそれぞれ違う。むしろいつも皆同じというほうが不自然だ。
しかし、旅館は客に対し、それぞれの形でホスピタリティを提供し、それに対してどう感じるかが評価となって現れる。
再度検証しなければならないことは、多くの人が不快に感じることを、当たり前のように提供し続けていることはないか?
旅館が提供している商品(施設・料理・サービス)が、対象顧客のホスピタリティの表れとして作り上げられたものであるかどうか?
そして、さらに一人一人の顧客に対して心から心に伝わるホスピタリティを旅館が持っているかが大事だ。
客を喜ばすためのパフォーマンスだけに走ったり、廉価だけが売り物の旅館には、一部かげりが見え始めているという。
それは、いかに料金が手ごろであっても、心に残らない、つまりホスピタリティの精神が全くない旅館は、決して長続きはしないのである。
わが旅館では、ホスピタリティがどのように存在しているか、今一度検証してみてはいかが。