第326回 昨日より少しだけ進化する
活気がある旅館は訪問していてとても気分がいいものだ。
それとは正反対に、申し訳ないが玄関に入った瞬間に、もう帰りたくなる旅館がある。
玄関・ロビーというのは、単に施設面の商品力が出るだけではなく、その旅館の現状が集約されているような気がする。
これは旅館関係者のみならず、おそらく誰もが理屈抜きで感じる雰囲気であり、大部分が当たるものだ。
それを構成するものは、たとえばフロント係りの印象であり、清掃のレベルであり、照明や調度品の印象であったりする。
これらが客に対して発するものが、旅館内部の現状をよくあらわしていると思う。
さて、人はその内容よりも、数秒間の第一印象で相手を判断するといわれる。
実際自分がその立場にたったときは、そのように「勝手に」決め付けている。
実際、旅館のスタッフは客と長い期間付き合うわけではない。
夕刻から翌朝までのわずかな時間ではあるが、瞬間瞬間で、何をどう感じるかが、その旅館を評価することになる。
こんな当たり前のことを自問自答してみる。
そしてわが旅館が客にどう感じてもらっているのかというところから、改めて旅館の現状を見直してみてほしい。
冒頭に述べた活気のある旅館の共通点は、毎日、自分たちのオペレーションや提供商品が、これでいいのか?問題点は何か?もっと良くするにはどうしたらいいか?というテーマで議論し、より良い方向を目指して行動をしている。
だから、少しずつではあるが、毎日常に進化しているのである。
ところがそのような意識がまるでなく、日々の業務をただ黙々とこなすだけのマンネリ化した毎日を送っている旅館は、確実に衰退をしている。
他人や他館と比較する前に、昨日と今日の自分、わが旅館を比較することが先決だ。
そして毎日のように繰り返す、同じミスや物事の先送りを、断固自ら阻止する。
こういう自己に対する厳しさがあって、初めて提供商品に対する褒美が客からもらえるのではないか。
旅館を取り巻く外的環境の変化に取り残されず、その上を行く旅館を作り上げるためには、その旅館の経営者自ら変化していく以外ない。