第334回 見直すべき旅館の慣習
ある旅館では、日常の会議がとても多く、その殆んどが数字を追うものである。
しかしそれだけでは新たな発想が生まれないので、あえて経営数値にとらわれないテーマでディスカッションを行っている。
そのなかの今月のテーマが「旅館の常識、世間の非常識」であった。
つまり、旅館では当たり前だと思っていても、客から見れば不思議なことが結構ある。
これをピックアップして提供商品やオペレーションをダイナミックに変えていこうというのが目的だ。
従業員からのヒアリングや顧客アンケートにより、あげられた主な項目は次のものであった。
なぜチェックイン時に夕食の飲み物をオーダーしないといけないのか?
食べきれないほど夕食が出るのに、同じような追加料理がリストアップされているのはなぜか?
売店はどこも同じようなお土産が並んでいるのはなぜ?
旅館の飲み物や二次会処はなぜこんなに高いのか?
冷蔵庫の飲み物はセルフサービスなのになぜサービス料が付加されるのか?
休前日や特別日は平日となぜこんなに料金の格差があるのか(旅行商品全般に言えることだが)?
これらはかなり以前から多くの旅館で行われており、今も残っている現象である。
理由はいろいろあるだろうが、その殆んどは旅館の勝手な都合であり、客は首をかしげることが多い。
当館では、この手の慣習を払拭していかないと、この先、生き残れないという危機感を持っている。
しかし、日常の業務の中では、これらの議論は続かない。
また、すぐに声の大きい幹部から「それはできない」とよこやりが入り、ストップしてしまう。
こんなことを予測した社長はあえて若手を中心としたプロジェクトチームに権限を与え、特命チームとした。
社長は客から見て理解しにくいしくみや制度は徹底的に排除していくとしている。
なぜならば、もはや隣の旅館が競合するというレベルではなく、旅館自体を選んでもらえないところまできているという危惧があるからだ。
このことにまず気づき、抜本的な対策を旅館はとるべきである。