第263回 特定の客層に強い宿づくり
一泊二食という形態だけで旅館の収益を生み出し、かつ資金ショートをしないですむビジネスモデルを維持できている旅館が激減している。
バブル期には、まさかこのようなことになるとは誰も予想できなかったとはいえ、このハードを何とか活用し、必要な収入を確保するための知恵が今まさに必要だ。
昼食と入浴をセットで売る商品や、泊食分離といった発想は新しいものではない。 しかし、旅館は一泊二食があくまでも主流であり、このオペレーションを乱すものは、極めて消極的であった。だから、日帰り商品を扱っている旅館でも時間は三時間以内だとか、利用者にとっては制約が多く、とても日帰り専門の施設には及ばないものになっている。
商品の優位性としては、日帰り施設と旅館とでは「料理の格」が違うとか、イモ洗い状態の風呂ではないとすることを言うむきもあるが、いずれにしても収益の大きな柱とは成り得てはいない。
最近、ゼロ泊二食というパターンがマスコミに取り上げられているが、平日の稼動を埋めることと、このためにかかる経費とを天秤にかけているところが多い。
しかし、現実は客室の大部分が埋まるのは休前日のみ。平日は小手先のプランをいくら増やしても部屋は相変わらず空いているというケースが大部分だ。
ならば、旅館ごとの特性を活かして、新規対象顧客層の開拓に力を注ぐ必要がある。つまり今まで旅館に泊まりたくても泊まることがなかなかできなかった層に着目し、旅館自らその客層に踏み込んでいかなければならない。
数の上からはまだまだ少ない特定の客層をねらった宿。例えばペット可能、乳幼児づれ大歓迎、ハンディキャップ客対応が決め細やかな宿、食事制限対応が可能な宿、特定の趣味が高じてその世界が楽しめる宿、等々。
一見してそれ以外の客層からは敬遠される向きもあるが、同じ形態の旅館はそんなに必要ないのである。ならば新たな可能性のある顧客特性、つまりこれらの顧客には何が必要か?何が満足か?何をクリアすべきかを十分研究し、旅館の新たな商品として開発していく発想が不可欠である。
閉塞した時代には、自らその殻をやぶることが必須条件だ。