第340回 課題の抜本的背景に着目する
経営者はさまざまな意思決定を日々継続して行わなければならない。
単純で答えが明確なものは、スピートやタイミングが重要だ。
これらを対処していくためには、部下に権限委譲を行うことができる。
しかし、経営者自らでないとできない類の意思決定がある。
これは明確な答えが存在せず、矛盾だらけの要素のなか、どっちにころんでも、すっきりとはいかないやっかいなものである。
これをあえて矛盾の姿のままで放置せず、その旅館なりの方向性を自ら示していかなければならない、大事な意思決定である。
重要な意思決定を行うには、可能な限り正確な情報や判断材料が不可欠だ。
経営者が旅館のすべてを見渡せる範囲で運営されていればいいが、そのような条件のところは数少ない。
旅館は経営者の知らないところで、同時にいろいろなことが起きている。
重大な問題解決や新たな展開を図ろうとする場合、実のところ何が起きているのか、その根本原因や背景は何があるのかを、「これでもか」というくらいしつこく探っていくことが大事だ。
ここのところが結構あいまいであることが多い。
だから現場担当者や幹部から挙がってきた判断材料は、完全ではないという仮設のもとで、これを検証する作業やしくみを持っていたい。
例えば、その現場に出向いてみることや、複数のスタッフからのヒアリングを行う。
これをもとにその原因・背景を自分なりにたて、再度確認するというプロセスである。
現場からの報告を鵜呑みにせず、「それはそもそもどういうことか?なぜそうなったのか?」を数回繰り返すことにより、当初の報告の内容が揺らいでくる場合がある。
この兆候を逃さないことが、後々の意思決定を誤った方向に向かわせない有効な予防策となる。
旅館を取り巻く外部環境の変化そのものは、旅館経営者がまず素直に受け止めることだ。
そしてその変化が我が旅館にどのような影響を与え、今後どう対処していくかという大きな命題を経営者は抱えている。
それとともに、日常発生するさまざまな課題とその問題可決をどのように対処しているか?
課題・背景の抜本的な検証と意思決定を密度濃く、かつスピード感をもって日々当たること。
これは経営者の重要な仕事である。