第348回 中小企業再生支援協議会の判断基準

 中小企業再生支援協議会へ相談を持ちかける企業は後を絶たない。

 そのなかで、観光地を抱える地域においては旅館業の件数はかなりの数を上げている。

 金融債務が膨らみ、自力で約定通りの返済が不可能になったため、金融機関の進めもあり、協議会案件にあげてもらおうという動きである。

 協議会発足当時は、実績数をあげる必要性があったのかもしれないが、限られた期間で調査を行い、再生計画書を経済産業省へ提出するという動きが一部見られたようだ。

 しかし、このような案件は、結局計画通りにはいかず、途中で頓挫し、法的整理に移ったケースも多々ある。

 したがって、協議会の存在意義を再度確立するためにも、再生する可能性の高い企業であるかどうかを精査することに、協議会は慎重になっているものと思われる。

 中小企業再生支援協議会の事業実施要領には、「実質的に債務超過である場合は、再生計画成立後最初に到来する事業年度開始の日から三~五年以内を目処に実質的な債務超過を解消する内容とする」「経常利益が赤字である場合は、再生計画成立後最初に到来する事業開始の日から概ね三年以内を目処に黒字に転換する内容とする」と言う記述がある。

 つまり、最初のハードルは三年以内に「フル償却をして」経常黒字になることができる企業であることなのだ。

 この見込みが無いところには、協議会としての再生支援はできないとしている。

 これは客観的にみれば、国の税金を一部投入して再生支援をする立場としては、きわめて当然である。

 案件を挙げようとする旅館や金融機関も、このことをまずもって充分認識しておく必要がある。

 ではその判断材料は何かと言うと、直近の実績が黒字化へ向かっているかどうかである。

 旅館の場合、売上高、入込数、客単価、稼働率、利益(損失)額を数年にわたり、毎月のデータで確認し、見込みがあるかどうかを判断する。

 そしてその土俵に上れば、中期的にみてDDS等の支援を行う事により、債務超過を解消する数値計画とそのためのアクションを取り込むことになる。

 過去の債務を棚上げしても再生できないところは案件にはあがらない。