第350回 我が旅館の強み・弱みを共有する

  経営数値の目標達成に向かって、現場が一丸となって取り組もうとしても、あるところでつまずくと、そこから先がなかなか進まず、結局頓挫してしまったという経験はないだろうか。

 ある旅館では、毎年この繰り返しをしていた。

 なぜそうなるのかを改めて問いただしてしてみると、スタートラインでは総論賛成なのだが、立場や考え方、行動パターンの違いから、足並みが揃わなくなり、軌道修正をするエネルギーがなくなってしまうということだった。

 そこで今年は、幹部十名が集まったところで、自館の強み・弱みを明確にし、共有することから始めた。

 具体的には「施設」「料理」「サービス」「環境」「営業・販売」「業務管理」「組織・意思決定機関」「人材」「財務・資金」「企画・アイデア」の十項目に分類し、それぞれ強み・弱みについて、各自が他人と相談せず、一項目につき五個以上記述してもらい、これを集計したのである。

 この作業をするのに、約二時間。十名×十項目×五個×二(強み・弱みそれぞれ)で千項目の「事実」が一気に集まった。

 この一覧表を見ると、大多数の人が共通して認識していること。

 大多数が認識しているが、当事者だけがその認識が無いこと。

 きわめて少数意見だが、注目すべきこと。の三パターンに分類できる。

 次にこれらをグループ分けし、その理由や根本原因を追究していく。

 さらに次のステップは、強みをさらに促進していく対策を、弱みを補強していく対策を検討していく。

 この議論は時間を忘れてしまうくらいに白熱する。

 それは、題材が出席者自ら提示したテーマであるからだ。

 促進策や補強策はすぐに取り組めるものから、お金と時間がかかるものまで一様ではない。

 また、重要度合いもさまざまだ。

 このような要素を考慮に入れ、実施項目の順番とタイムスケジュールを落とし込んでいく。

 これが今年度の行動指針として確立することとなった。

 今までは社長自らが作成し、従業員に提示をしていたが、うまくいかない繰り返しだった。

 しかし、今年は幹部自らが作り上げたテーマと方策、そしてタイムスケジュールがある。
 
 幹部が一丸となって行動する準備が、いままさにできた。