第354回 部門ごとのオペレーションと方針を共有するメリット
旅館内部の業務改善については、どの旅館も重要な事項として取り組んでいる。
その内容は、当月に発生した部門内での課題を、いかにして解決するかという議論が主な内容だろう。
これを毎月継続的にオブザーバーとして見ていると、対処療法的な解決策を導き出してはいるが、多くの場合、中途半端な結果に終わり、数ヵ月後にはまた同じような課題が顕在化してくるというケースが多い。
なぜ同じ事を繰り返すのかというと、そもそも抜本的な課題の原因を把握することなく、傷口をふさぐ程度の解決しか行わないからであり、傷の中はますます悪化していく事実を把握していないからである。
なぜこのような悪循環が生じてしまうのであろうか。
業務改善を目指す会議では、たいていの場合、経営幹部と部門のリーダーによって、ディスカッションが行われている。
その場面では、あるべき姿に達していない経営者サイドの苛立ちと、現場の立場を最優先で守ろうとする部門長との立場の違いが露呈する。
一見どちらの言い分もその通りだと思うことがある。
物事は様々な角度から見ると、全く別のものに見えるものだ。
だから、立ち位置が違えば、課題の原因や解決方法は全く正反対の意見がでる。
お互いの立場を理解し、意見の相違を認識した上での議論であれば、建設的な解決策を導くことが期待できるが、力関係が働き、その場では一方が納得したように見えても、実は全く納得していない場合では、不満が募る一方でよい結果が生まれない。
この繰り返しをいい加減やめようということで、部門長が現場のオペレーション内容と方向性、課題について、経営幹部および各部門のリーダーたちの前で、順番にプレゼンを実施する機会を設けた。
これまでは他部門の業務に関心が薄れがちだった。
しかしそれぞれの部門長が旅館をもっと良くしようと思っていることがわかり、自部門とのかかわりが意外とあることを理解した部門長たちは、連携の必要性を強く感じたのである。
業務の現状発表は、仲間意識をよみがえらせると共に、課題の共有も併せて可能にする。
旅館の内部を強化することは、課題解決の有力な方法だ。