第356回 部署間の報連相に注目する

 自分が働いている旅館の中で、日常「これはまずいな!」と思っていることをスタッフ全員個別に記述してもらうことがある。

 旅館は同時刻に複数の業務が行われている。

 大方は無難にこなしているものの、大なり小なりのトラブルは毎日発生している。

 ある旅館の現場では同じ類のトラブルが繰り返されていた。

 そのつど女将や支配人が、当人に対して注意をするものの、結果として是正がなされていないのである。

 このような場合、とかくその担当者の資質や力量に目が向きがちだ。

 「あの人はいつも同じトラブルを起こす」というレッテルをはられてはいるが、結局のところしょうがないということで片付けられている。

 確かにケースによっては、その担当者がもう少し周囲に気を使った行動をとれば、回避できたであろうことは多い。

 しかし、業務オペレーションを人任せにばかりしていては、品質の差が担当者にとってまちまちであることを容認してしまうことになる。

 このような状況では、提供商品の品質向上ははなはだ難しい。

 旅館を取り巻く経営環境が厳しいなか、どの旅館も適正価格で魅力ある商品を顧客に提供し、集客アップを図る営業展開をしていかなければならないのである。

 このサイクルをまわしていくためには、少なくとも顧客目線でダメ出しが出るオペレーションを繰り返させることは何としても避けなければならない。

 冒頭の「これがまずいな!」の回答に、必ずといっていいほどでてくるものがある。

 それは部署間の報連相が希薄だという指摘だ。

 全く知らされていないプランが存在し、料理の説明もできない。

 いつの間に無料チケットが配布されていたのか?

 当日の変更が板場に伝わっていない。等々毎日のように聞くトラブルである。

 旅館のオペレーションは、複雑なバトンリレーのようなものだ。

 いつ発生するかはわからない。

 だから経験上想定されるバトンの受け渡しを、これでもかと言うほどシミュレーションと訓練を行う事が大事だ。

 その精度を高めることで、顧客から感謝の言葉が増すのである。

 仕方なく業務をこなすといった感覚では、バトンは次へつながらない。