第359回 計画達成の為の阻害要因を取り除く
客室数が百を超えるような大規模旅館になると、組織がうまく廻ることが経営上重要となる。
あいまいな意思決定やどんぶり勘定が結構多い旅館業界だが、数字をことのほか重視している旅館がある。
この旅館では事業の結果は数字のみで判断するという社長方針のもと、部門ごとの計画や結果は、あらかじめ決められたフォームに則り作成される。
そして逐次、PDCAを潤沢にまわすために、チェックを怠らないのだという。
たしかに他の旅館と比較すると合理的で透明性が高い体質があるのだが、現場では課題が見え隠れしている。
この時期部門別計画書を作成することに労力をつぎ込み、幹部会議にて部門別発表会が終了すると、その計画書は誰も見なくなるという現象がある。
トップから現場責任者へは、必達の目標数値が示される。
これを基に達成すべき数値を細かく策定し、落とし込む。
そしてこれをどのようにして達成していくかという行動計画にブレークダウンしていく。
ここでは達成させるためのつじつま合わせの要素が入り込んでくる。
現場責任者としては、トップからの指示に対して「できません」と言うのはもちろん論外。
いかにして達成させるかという戦術を構築し、クリアすることが中堅幹部の仕事である。
これはまさしく正論である。
だが、このご時勢の中、部門の達成目標は簡単に達成できるようなものではないはず。
行動を起こすなかで障壁となる内容を関係者と共有し、それをどのようにしてクリアしていくかが、実は重要な要素である。
この段階に入ると、数字ではなく、人にかかわる問題が必ず出てくる。
「あの人がいる限り、この課題はクリアされない」とか「ここから先はタブーとなっている」というようなことが出てくる。
経営者及び幹部はこの段階で目をつぶらないことが大事だ。
あくまでも基軸が「計画を達成させるためには例外を作らない」というルールを前もって確立することだ。
それをあらかじめ共通のルールとしておくことにより、PDCAが廻っていく。
流れが止まる要素は何か、これを認識しクリアしていく工夫が最大のポイントだ。