第365回 外国人観光客より考える日本文化 ①
大学時代の一般教養で国語を履修した際に、当時の先生から印象的なことを言われたのを今でも覚えている。
『外国の友人が日本に来て、あなたに歌舞伎を見たいと。歌舞伎とはどんなものか教えてくれと言われたら、あなたは説明できますか。』と先生に質問された。
ところがその質問に答えられる学生はいなかった。
今思えば、日本人としてなんと恥ずかしいことだったろうか。
今現在、アジアを中心とした諸外国からの外国人観光客の誘致を2003年より観光庁より『ビジット・ジャパン』キャンペーンを始めて、積極的に進めているが、肝心の日本への旅行目的をはっきり見定める必要があるのではないだろうか。
日本政府観光局(以下JNTO)の調査によると、2009年、外国人観光客の訪問調査では1位新宿(34.5%)、2位銀座(26.5%)3位浅草(24.2%)以下大阪、渋谷と続いており、東京を中心とした大都市圏に集中していることが伺える。
ところが、同じくJNTAの調査で外国人観光客が訪日前に期待していることの調査によると、1位日本の食事(58.5%)2位ショッピング(48.5%)、3位温泉(43.4%)、4位自然景観(41.8%)以下伝統的な景観、歴史的建造物と続いている。
この結果より考察するに、外国人観光客は日本の食事や温泉、日本の文化に触れることに期待し日本に訪れるが、日本では大都市圏のみの体験にとどまっていると言える。
もちろん交通だとか諸問題はあるが、はたしてこれでよいのであろうか。
例えば、外国人観光客の日本において最も印象に残った食事はという調査で1位寿司、2位ラーメン、3位刺身となっており、その中には日本の懐石や伝統料理は入ってこない。
食べたのか、食べていないのかはわからないが、何とも淋しい結果だと感じる。
さて、外国人観光客が期待していることを満たすのは果たしてどこだろうかと考えると、自ずと答えは出てくる。
それは旅館である。
旅館という場所には日本の文化が詰まっている。
食事は和食、温泉につかり、浴衣で過ごす。
部屋は畳敷きが多く、椅子ではなく生活をする。
まさに日本文化の代表と言える。
しかし、昨今、日本人でさえこの日本文化を継承していない人が多いのではないだろうか。
このシリーズでは日本文化に触れながら、外国人観光客誘致も一つの再生の切り口であると位置づけ考えていきたい。(続く)