第377回 営業戦略の構築のために~管理会計~③

 そもそも管理会計はなぜ行うのか。

 それは前回も記述したが、「過去」「現在」を数字でしっかりとらえ「未来・将来」を計画するためにとされており、その起源は20世紀半ばのアメリカから始まり、日本でも1960年代に活発に行われるようになった。

 その基本となったのが、原価計算に基づくものである。

 もちろん原価計算は主に製造業に使われている場合が多いが、ホテル・旅館業でもこの原価計算は欠くことができない数字である、特に料理の部分において。

 そこで今回の管理会計では料理原価(飲料含む)について述べていきたいと思う。

 一般的に原価計算で使われる、原価率は対売上で計算されるが、ホテル・旅館の場合、料理原価を計算するときに、対売上で行ってしまっては数字がより信憑性のあるものでなくなってしまう。

 なぜなら、前回書いたが、ホテル・旅館業では、宿泊等の主体売上と、売店等の付帯売上とあるからである。

 当然この場合計算に使うのは、食事が含まれる主体売上の数字をもとに計算する。

 国際観光旅館連盟の調査によると、料理原価は平均で20.3%となっている。

 もちろん、細かく見れば地域や規模によって多少は数字が変わるが、この数字はここ4年ほど大きな変化はなく同じほどの値で推移している。

 当然、この原価率を上げればより豪華な食事を提供し、下げれば節約しているということになるのだが、これがそのまま直接宿泊客の満足度とイコールかと思えば、あながちそうとも言い切れない。

 2つの数字から考えていきたい。

 まず、旅館の規模別の料理原価率を黒字旅館に限ってみていくことにする。

 その場合、30室以上の中規模、大規模旅館の平均は20.4%と全国とほとんど変わらない数字だが、客室数30室以下の小規模の場合、18.3%と全国より抑えた数字になっている。

 そして2つめに、赤字旅館をみてみると、料理原価は100室以上の大規模旅館でこそ18.7%と抑えているが、中規模・小規模な旅館の場合21.7%と平均よりも高い数字である。

 この2つの数字から考えるに、高い食材を使い料理を提供することがそのまま宿泊客の満足度につながるとは必ずしも言えないように思われる。

 ホテル・旅館業において料理は評判を左右する大きな指標になるが、ここで大事なことは、いかに工夫し食材の原価を下げつつ料理の質を落とさず、できれば高めるという当たり前のことにいきついてしまう。

 そしてそのためには見直すべきはまず『仕入』である。

 次回はこの『仕入』について考えていきたい。