第385回 己が旅館について知る~③動線について
動線。
その名の通り、動く線つまり道のことなのだが、ホテル旅館業においてこの動線には2種類ある。
従業員動線と、客動線である。言わずもがなではあるが、従業員動線は従業員が仕事をする上で通る道で、客動線は客が通る道である。
この動線の組み方が実は大きくホテル旅館業では影響してくるのである。
当たり前なのかもしれないが、客動線はフロントから客室、客室から風呂や食事処といった道が中心になる。
大切なことはこの道々にいかに魅力的なコンテンツを用意するのかということである。
たとえば、売店の場合はこの客動線の流れに沿う形に持っていくことが大切で、一番は客室からフロントまでの動線の中に売店があることである。
チェックアウトの時に何気なく目にとまりそのまま売店で土産物を購入する。
わざわざ動線から外れているところに土産物を買いに行くお客は少ないからである。
また、この客動線に沿って、絵画や生け花などを飾るという形で、宿泊客にアピールしている旅館も多いが、匂いというのも重要で、この通りが変なにおいがしたりすると、それだけで雰囲気は台無しになってしまう。
いかに、立派な絵画が飾られていても、きれいな生け花があっても、臭いとだめなので、ここに匂いということも注目し、香を焚く等の工夫をしている旅館も多い。
次に従業員動線についてである。これは従業員が仕事をする上で通る道で、仕事効率を重視されたみちであるが、大切なことは、この従業員動線が客動線と交わらないということである。
どうしても従業員動線の中には、お客様の前に出せない部分が多い。
それが、交差することでお客様の目に触れてしまうと、それだけで、雰囲気は損なわれ興ざめしてしまう。
これを徹底的に行っているのが、東京ディズニーリゾートで、東京ディズニーリゾートの従業員動線はすべて地下にあり、交差しないようになっている。
もちろん雰囲気を損なわないために。
もちろん、今からすべての従業員動線を地下にということは無理な話ではあるが、いったん自身の旅館をこの動線という切り口から見直してみるのはいかがであろうか。
実際にお客になって館内を回ってみると、思ってもみなかった動線の交差が発見されるかも知れない。
その点を1つ1つ修正し、改善していくことによって、質の高い雰囲気を作り出せるのである。