第272回 リスケがしやすい環境の中で
「中小企業等金融円滑化法」が施行された。当初は金融機関がどの程度融通が利くようになるのか疑問視されたが、いざふたを開けてみると、かなり借り手からすればメリットがある法律である。
例えば、旅館が資金繰り上、借入金の返済額がネックになり返済条件の変更をメインの金融機関へ相談したとしよう。メインの金融機関は他の金融機関や信用保証協会等と連携を図りつつ、できるだけ適切な措置をとるよう勤める義務がある。
これは今まで約定どおり返済してきた旅館の例であるが、メイン銀行の対応は素早く数日で返済を一年猶予する内定を決めた。この方針について協調融資をしている数件の金融機関に伝えたところ、全てがメイン銀行に同調する旨の回答を得たのである。
これまではリスケの相談に出向くと、何度も計画書の作成を求められ、金融機関の支店から本部へあげられるまでかなり時間がかかったものだ。その結果、旅館が期待する回答が必ずしも得られるとは限らず、資金繰りが厳しい旅館にとっては、さらに経営状況が悪化するケースも多々見られたのである。
今回、この法律の施行により、各金融機関が速やかな対応を行っているかどうか、金融庁のチェックが厳しくなると金融機関側が踏んでいることもあり、少なくとも現時点では概ね金融機関の対応は対象となる企業にとっては順風が吹いている。
したがって、リスケを希望する旅館としてはスムーズに決済を得るためにも、必ず必要となる資料の作成はできるだけ早く済ませておくことが望ましい。
計画書のフォームは金融機関ごとに異なるが、相談時点で要求される内容はほぼ同じだ。
主な項目は、当社の現状・問題点、具体的な対策と達成期限、計画の概要、計画の効果、そして損益計画・予想貸借対照表、資金集計計画等である。
特に具体的な対策については提供商品の見直し、内部体制の確立、コストカット、販売促進策等について、行動するためのガイドラインを早急に作り上げることが大事だ。これは金融機関に提出するということ以上に、リスケの期間に自主再建を果たすための意気込みと実際の行動計画としての意義が大きい。
このチャンスを是非活かしてほしい。