第402回 相手を知り、己を知れば 金融機関との交渉 ③
前回、前々回と、企業が金融機関と交渉するのには、相手をよく知ること、具体的には、借入金がある場合、金融機関は、それ相応の引当金を積まなければいけない、そして、その引当金の割合は債務者区分によって決まっているということをお話しした。
つまりは、金融機関との交渉をスムーズに進行させるには、相手のリスクをも考慮し和らげる配慮、今回でいえば、引当金の額を抑えることがポイントとなる。
そして、そのためには評価をあげて債務者区分を上げることが重要なのである。
しかし、債務者区分のその大部分は決算書提出による数字での評価が強い。
概ね決算書の数字できまってしまうため、決算書の数字が悪い場合は、どうしても債務者区分は低く評価されてしまう。
そんな中評価を上げるにはどのようにしたらよいのかを今回は触れていきたい。
まず、わずかだが、評価に影響するといわれていることが数字上ではわからない部分になる。
例えば、企業の経営方針や販路、歴史や地元での雇用状況、経営者の資質や事業承継などがある。
そして、ここで重要となるのが将来の計画である。
この部分をいかにアピールできるかが重要となってくる。
もちろん出入りの担当者には話すことだが、評価を審査する担当者までその情報が伝わるのかどうかは、話だけでは難しい。
そのため、しっかりとその情報を書面、具体的には経営計画を策定し、現状を分析し、将来へ向けてこのように改善していくといった計画、そして、計画に基づいた返済計画をしっかり示すことが重要なのだ。
そして、経営者本人の誠意も重要といえる。
多くの中小企業の場合オーナー経営者が多く、例えば企業は苦労しているが、そんな中経営者はしっかりと役員報酬を取り、個人資産も十分にあるなどといったケースの場合、あまり評価はされない。
もちろん、経営者にも個人の生活があるので、何から何までというわけではないが、金融機関へ向けて、誠意を示す、または経営責任の一部を果たすといった意味でも重要になってくる。
最後に、最も重要なことは、上記のような数字に表れない努力をしっかりと周知し認知してもらうための方策を打つこと。
具体的には、決算書を金融機関へ提出する際、その中に経営計画書をしっかり盛り込み、将来ビジョンからそれに基づく返済計画まで示すことである。
そして、定期的に経営計画との誤差を確認し修正し報告するといったように誠意を示す。
これにより、金融機関の印象もかわり、評価にも影響が出ると言われている。
これにより、資金調達を有利に進められるかもしれない。
次回は、今回の発展編として、金融支援による企業再生方法について触れていきたい。