第406回 事業承継は至上命題 ②

 先日、90歳でこの世を去った三国連太郎さんの代表作『釣りバカ日誌20』の最後に、三国連太郎さん自身の思いが鈴木建設会長の言葉として映画の中で描かれている。

 その中に、『この会社は、私のものでは無い。ここにいる経営陣のものでもない。株主のものでもない。君たち社員のものだ。』『…働いている人とその家族の生活を大切にする。これが企業の社会に対する義務だ。』(釣りバカ日誌20ファイナルより 一部抜粋)というセリフがある。

 もちろん、商法上や税法上など、法的にという部分はあるが、企業のあり方を映し出しているセリフであると感じている。

 事業承継の問題にはこの視点が重要である。

 先週も書いたが、企業には続いていかなければいけないと考えた場合、事業承継をいかにスムーズに行うかは、どの企業も直面する必須の問題であると位置づけたい。

 さてそこで2つのパターンで考えていきたい。

 まずは、日本の中でもっと多い後継者が決まっていないケースについてである。

 このケースでは、特にオーナー経営者の家族による経営の中で後継者がいないケースの場合どのようにしたらよいのかを考えていきたい。

 1つ目は他の人が経営者になる場合である。

 大企業などはオーナー(株主)イコール経営者ではないケースが多いが、中小企業の場合はあまり見られない。

 資本と経営が分離していないのだ。

 考えられるケースとして、従業員の中から後継者を決めるケースが考えられる。

 この場合、当該旅館の内情には詳しく、経験も豊富ということで、後継としてはスムーズに行えるが、ネットワークの問題がある。

 特に旅館業の場合、地元での古くからのつながりであったり、地元の名士である場合が多いのでいきなり経営者が変わった場合ネットワークを持たない場合が多く、難しいともいえる。

 また、従業員の中からでは、感覚が変わらないといったケースもある。

 旅館業に限らず、中小企業の場合、経営者がどのようなネットワークを築き持っているのかといった部分が、経営の中で大きなウェイトを占めるケースが多い。

 また、感覚として従業員と経営者では全くちがい、時には時間に縛られず、無理をしなければいけない場合もある。

 そのため、従業員の中から後継者を決める場合、業種による経験、ネットワーク、感覚といった部分がポイントになると考えられる。

 教育をしなければということを考えると、後継者は早い段階で決定する方が良い。

 その準備にあたり、最近では経営者自身の紹介を行う会社もある。

 例えば、純然たる後継者候補を紹介してほしい場合もあれば、後継者は決まっているが、その教育期間だけ経営をお願いする中継ぎの紹介もある。

 次回は、後継者は別の会社というケースを考えてみたい。