第420回 実践ホスピタリティの第一歩 ②

 先週号で、ホスピタリティを行うには、お客様を感動させること。

 そして、そのためには、お客様の情報を集め、管理することが重要であると申し上げた。

 そして、自分だけは特別なことをしてもらっているという感覚が非常に喜ばれるのである。

 しかし、それが難しいのは現実である。

 実際にお客様の情報をたくさん集め、それに対応するとなると、少なくとも初めてお会いしてからいくばくかの時間が経過したのちになってしまう。

 ここで重要なことは、第一印象の問題である。

 この場合の第一印象とは初めて貴ホテル・旅館に来た時のことだが、情報が少ない中でいかに感動するようなおもてなしができるかであり、そのための方法として2つ取り上げて紹介したい。

 1つ目は、予約時の対応である。

 予約の際に、お客様から、どのくらいの情報を引き出せるかということである。

 このためには、まず電話予約時の対応をある程度会話マニュアルみたいのを作る必要がある。

 もちろん、長話になってしまうと、そこで印象を損ねてしまう可能性があるので、短く、かつ必要な情報を確実に引き出せるような、マニュアルを作り、一般化することである。

 また、やや手間が増えるが、インターネットでの予約の申し込みの場合も出来るならば、ホームページの申し込みフォーム欄に様々なアンケート形式の予約ページを作ることも策として良いと思う。

 2つ目は、小さな創意・工夫の積み重ねである。

 直接、個人のお客様の情報を知らなくても、様々なタイプのお客様に対応できるような、多くの創意・工夫を用意しておく。

 例えば、通路等にある生花、館内に立ち込めるお香のいい香り、そっと部屋に戻ると置いてある夜食など、小さな心配りである。

 これらのことは、1つや2つの創意・工夫だと、すぐに近隣の、いや隣の旅館が真似してしまう。

 しかし、これらのおもてなしのための創意工夫が100個、200個、500個となるうちに、隣もまねできなくなる。

 それが、第一印象から好印象を与え、他宿泊施設との差別化へつなげ、ホスピタリティを叶えるための施策と言える。

 始めから、ホスピタリティを実施することは、なかなか厳しく、徐々に段階が上がっていくものだと考えている。

 第一印象で好印象を与え、2回3回と選んでもらえるホテル・旅館にならなければ、ホスピタリティを実施することは難しくなるのである。

 そのため、第一印象の段階で好印象にするために、初めてのお客様との接触である予約時にいかに多くの情報を引き出せるか、そして、小さな創意・工夫を積み重ねて行けるのかということが重要であり、その一つ一つを全スタッフが認知、意識し、少しずつ少しずつ積み重ねていくこと、いつも以上にお客様とスタッフが向き合うこと、それが始めの一歩ではないだろうか。