第423回 お接待から考える日本のインバウンド
四国には、四国八十八箇所の霊場を巡るいわゆるお遍路さんという風習がある。
これは、江戸時代のころより庶民の間で流行した巡礼の一つで、かつて四国で修業した弘法大師の徳にあやかるようにということで、現在では、徒歩はもちろん、自転車や車を使うといった具合に形こそ多少変わったのかもしれないが、今でも盛んに行われている巡礼である。
このお遍路さんが今でも盛んに行われている理由はいくつか考えられるが、その中の一つに、経済的負担が少なくても行えるということがある。
それは四国の人々の間で今も根付いている『お接待』という習慣である。
四国でお遍路さんに行う『お接待』とは、例えば、遍路の途中に見知らぬ人より「お茶でもいかがですか」と声を掛けられたり、「接待所」と呼ばれる無料の休憩所があったり、中には、宿泊をさせてくれる家や、現金をくれる人もいるとのことである。
これは、お接待自体に、代参の意味があり、徳の高い行為とされておるからだとされているが、もちろん、この好意の裏には、四国の人々奉仕やおもてなしの心と、苦労があったと思われる。
江戸時代に始まったお遍路という巡礼が、平成の今の世の中でも盛んに行われている理由の一つに、四国の人々の中に根付くお遍路さんをおもてなすあたたかい心が可能にしているのだと思われる。
さて、話は変わるが先日2020年の夏季オリンピックが東京で開催されるという嬉しいニュースが飛び込んできた。
これをきっかけに多くの外国人が東京近郊、ひいては日本に訪れることとなる。
これは、インバウンドの観点から言えば大きなチャンスである。
これをきっかけに日本の「おもてなし」を諸外国の人々に体験してもらういいきっかけである。
そのために、私は旅館やホテル産業界だけではなく、7年後といえば今の中学生も大人になる年である、そのためそれぞれの地域で、子どもたちにまでしっかりと「おもてなし」の気持ちを教えることが大切であると考える。
その中で、私は四国の人々の中に今でも根付いている『お接待』の精神、諸外国の人々を日本全体で『お接待』するということが日本を好きになってくれる外国人の方を増やし、インバウンドの大きな発展に寄与できるのではないかと思っている。
東京オリンピック開催、56年ぶりのこの大きなイベントを観光業界にも明るい光を照らすきっかけにしていきたい。