第277回 売上計画を達成させるプロセスをつくる

  金融機関から次年度経営計画の提示を求められている旅館の話である。 経営者は財務担当者に対し、すでに作成済みの中期経営計画の数値を基に次年度経営計画作成を指示した。

 財務担当者は得意のエクセルを駆使して、部門別の売上と原価そして経費の詳細を前年の割合を基に一瞬のうちに導き出した。そして季節変動指数をかけて月別の損益計画を作成し経営者へ提出した。

 経営者はこれを金融機関へ、そのまま出しこれで一段落だと予想していた。 ところが金融機関の担当責任者からは、財務的には整合性がとれている。ではこれをどのように実現していくかというプロセスを聞かれ、ことばにつまってしまったのである。

 この旅館は経営計画を作成するものの、あくまでも決算書ベースの損益計画であり、現場でそれを落とし込んでいくことはしていなかった。だから予実績管理会議と称する毎月の検証の場においても、あくまでも計画と実績の差異について、その原因を想定して理由付けすることの繰り返しであった。

 計画値を達成させるためには、売上部門がそれぞれ独立した事業体であるという認識がまず必要だ。したがって売上確保の基となる日ごとの入り込みと顧客特性、つまり個人客やグループ客、団体客のウエイトがどの程度なのかによって、宿泊単価や二次消費の売れ方は必然的に変わってくる。

 例えば、圧倒的に子供連れの個人客が多い日はクラブの売上が低くなる。そこで個人客向けに売店のキッズコーナーを前面に出して購買頻度をアップさせるなど、機動力を駆使した対応が求められる。団体が入っていないときは、クラブを臨時休業にして、そのスタッフを売店やイベントに投入することも臨機応変に行うべきである。

 旅館の品揃えに合わせて客はお金を落としてはくれない。客の特性に合わせて提供商品を変えていくことにより、計画達成のためのプロセスができていく。
 このようなことは当たり前だと言われそうだが、案外できていないところも実は多い。

 売上計画達成のためのプロセスとは、提供商品に対して顧客が喜んでお金を払ってくれる仕組みを作り上げることであり、これが計画数値達成の裏づけとなる。