第439回 経営者に最も必要なことは⑤

 消費税率引き上げの問題が間近に迫っており、マスコミでもいろいろな形で取り上げられている。

 中には自動販売機の缶コーヒーの値段などで論議している番組もある。

 もちろん宿泊業界でも、料金の表記を内税にするか税抜表示にするか等議論が行われているが、経営者にとって消費税はもっとインパクトが大きい。

 消費税の場合、当たり前だが利益が黒字だろうが赤字だろうが現状で概算で売上金額の5%という計算になる。

 仮に売上1億円の企業の場合、現状では500万の消費税を納めているのだが、来年度には800万、ゆくゆくは1000万円となる。

 500万円と1000万円では受ける印象も、与えられるインパクトも大きく違う。

 もちろん、それは価格に反映されるという側面も持つのだが、やはりこの増税にはいろいろな苦労を伴うことになるだろう。

 さて、ここで言いたいことは、消費税増税についてではなく、経営者と大衆の感覚にはずれがあるということである。

 それは、状況や立場が違えば価値観が違ってくるということなのである。

 従業員との感覚はどうなのか。

 はっきり言えば、経営者感覚と従業員感覚には大きな乖離がある。

 それは、立場が違うため当然であると言える。

 そのため、労務管理を行う上で気を付けなければいけないことは、『従業員感覚』ということである。

 特にかつての滅私奉公の時代と変わっている今は従業員の中に会社への忠誠心を高めることが非常に難しいと言える。

 では、どのようにしたらうまくいくのであろうか。

 それは抽象的な物言いをすれば、経営者、従業員それぞれが相手の立場に立って考え、相手を思いやることなのである。

 しかし、実際にそれを現場で行うことは難しい。

 ただ、労務管理がしっかりしているというか、雰囲気がいいなと感じる旅館には共通点がある。

 それは、従業員がみな積極的であり、決して義務的でない場所である。

 そして、そのような雰囲気を持っている旅館では大きく2つのパターンがあるように感じている。

 1つは、経営者が現場に立って率先している。

 もう1つは、逆に従業員1人1人に柔軟な権限を与え責任を与えているということである。

 どちらも非常に難しいのであるが、いずれにせよどっしり構え懐の深さというものが必要になる。

 最近では本屋で従業員満足度は顧客満足度に反映されると謳い、従業員満足度を上げるためにという様々な趣向の本を良く見かける。

 しかし、日本ではそのようなことは昔からやっているのである。

 従業員の気持ちを考え、従業員に背中を見せ、従業員を信じる。

 そんな当たり前に昔言われていたのことこそ、今の労務管理に必要なのではないだろうか。