第278回 わが旅館を選択してもらうためには

 提供商品の品質は決して悪くはないのに、集客が計画に対して思うようにいかず、苦心している旅館は多い。

 このところ、勢いがある新興勢力の旅館ばかりが目立っているかのようであるが、顧客が旅館を選択・決定する要因はいったい何かということを改めて検証しなければならない。

 業界で認識されていることは、宿泊料金の安さ、年間統一料金、無料あるいは格安での送迎バスの存在、認知されるまで繰り返す新聞広告、ネット系エージェントでの口コミ高評価等があげられる。

 一口に旅館といっても対象となる客層は様々であり、宿泊目的や料金、そして何をもって満足するかということは、それぞれ異なる。

 大事なことは、わが旅館の対象顧客はどのような特性があり、何が宿泊の選択決定要因となるか。また、競合する旅館はどのような対策をとって集客を実践しているかを検証すべきである。

 かつて、エージェントからの集客が多く、個人、団体とも入り混じっていながらも、結果として資金が回っていた旅館が総じてピーク時の半分しか集客できない状況に陥っている。

 その理由はいろいろ分析されているが、計画を達成するだけの集客ができていないということは、現行の方法ではだめだということだけははっきりしている。

 顧客が旅館を選択する要因は実は単純である。これは理屈ではなく感情・感覚の世界だ。だからこそ、対象としている顧客をよく観察、何がわが旅館に足りないのかをはっきりと見極めることである。

 それは提供商品なのか、あるいは顧客の満足感をうまく表現し、告知し、広く認知してもらうことなのかもしれない。

 いずれにしても、リピーターというのは自然に減少していくものである。だから、まだわが旅館を知らない見込み客に対し宿泊予約の行動をとってもらうためのプロセスを、自らつくり上げることが求められている。

 顧客が不満足だという声が多い旅館が淘汰されるのは自然だ。しかしとてもよかったと評価が高い旅館がそのような経過をたどるのは、なんとしてもくい止めなければならない。