第453回 消費者心理
会社の社長でも、ティッシュ配りのアルバイトの学生でも、態度の悪い喫茶店のウェイトレスでも、警察官でも、医者でも、テレビのタレントさんでさえ、どんな人でもお客様になる。
それが観光業、そしてホテル・旅館業だと思う。
以前、納入業者だって、今は仕事上の付き合いかも知れないが、優しく接しておかないと、一歩出ればお客になる可能性があるんだからという話をした。
特に納入業者の場合は多くの同業にも出入りしてる可能性があり、また、イメージだが情報を持っているケースが多いように思う。
そのため、口コミなどには思っている以上に影響力がある気がする。
要は、いつ何時消費者になる可能性のある業種は普段が肝心ということである。
さて、前回より消費者が買おうと思う瞬間、業界で言えば、この旅館に泊まろうと思うためにはということをお話しした。
今回は少し別の切り口から考えて行きたい。
一つ話を考えてみたい。
東京のある小さなカバン屋さん。
小さな工房と店を構え家内工業で行っており、かばんはすべて社長であるお父さんのオリジナルで手作りである。
平均して、1つ2万円位のカバンを売っていたのだが、近年の不況のあおりを受け、売れ行きは大きく減少、また、なかなか流行のスタイルを取り入れられず人気も低迷してしまっている。
そこで、社長は今まで2万円だったカバンを思い切って、15,000円、10,000円と値下げをし、最終的には5,000円以下の商品も販売した。
その結果どうなったであろうか。
売れる個数に大きな変化は無く、むしろ値下げ分今まで以上に経営は厳しくなってしまった。
そこで、思い切って金融機関より借入し先行投資の意味で店舗を改装した。
そして、改装が終わった1か月後、同じ商品を陳列した。
インターネットでも販売した。
しかし、今度は2万円ではなく、同じ商品を5万円から10万円で販売を行った。
知っている人からすれば何を考えているのかという話だが、これが、商品が完売になるほど売れたのだ。商品自体は元々いいので、価格を上げたことにより、ブランド力が付き、価格満足度も維持できたのである。
ではなぜであろう、もちろん、立地やリニューアル等の条件はあるものの、こと価格に注目した場合、ここには消費者心理が大きく影響している。
次回はこの具体例を検証し、実際の現場でいかに実践するかを紹介していきたい。