第464回 獺祭に学ぶ

 最近特に日本人の欧米化(西洋化)が顕著ではないだろうか。

 特に海外に行って思うのだが、流行こそ多少違えども、来ている服、街並み、食事など大差が無いようにみられる。

 ましてや、それが日本国内となってくると、昔は『全国津々浦々』なんて言ったが、今は同じ店、同じような道路、同じような服などで、ちょっと観光スポットにでも行かない限りは人が生活している風景は大きな変化がないように感じられる。

 逆にいえば、日本人の日本離れとい言い換えることもできるのではないだろうか。

 個人的な見解ではあるが、どこに行っても同じだと、若干寂しくも感じられる。

 そんな日本人の日本離れの影響を受けている業界の一つに『日本酒』がある。

 若者のアルコール離れも重なり、日本酒の売れ行きは40年前に比べて約75%も減少してしまっているのである。

 そんな日本酒業界の中で一人気を吐いている日本酒がある。

 山口県旭酒造さんが作る『獺祭』という日本酒である。

 ご存知の方も多いかもしれないが、アメリカ大統領オバマ氏が来日した際に安倍首相が手土産にプレゼントしたのでも有名になったが、1985年にくらべ、2013年は約17倍もの生産量を誇り、売上でみると、1億近い売り上げだったのが、2013年で40億近い売り上げと大きく変貌を遂げている。

 その大きな要因は経営の戦略とそれを実現するための具体的な生産管理とにあると思われる。

 少し紹介していきたい。

 旭酒造の経営者である桜井氏は『酔うため、売れるための酒ではなく、味わう酒を』ということを掲げ、徹底的に品質にこだわった。

 そのため、安価な普通酒ではなく、原材料の米を50%以上も削る大吟醸の製造にこだわってのである。

 中でも、『磨き二割三分』という獺祭の純米大吟醸は、その名の通り米を77%も削って作られる。

 そのため、誕生した酒は洗練に洗練を重ねたなんともすっきりとした、そしてフルーティーな香りのする、なのに味わいの濃い日本酒が誕生したのである。

 また、それらを安定供給するために酒造りの常識を覆す取り組みも行っている。

 それは、酒造りに必要不可欠な職人、杜氏の廃止である。

 徹底的な生産管理を行い、社員一人ひとりが生産に関わるようにし、責任感を持たせ、言わば、社員一人ひとりが酒造りの工程を担当しその年の出来不出来、職人の腕に左右されない品質管理、製造管理体制を作り上げたのである。

 さて、ここまで山口の旭酒造の獺祭を紹介してきたが、ここで言いたいことは、獺祭が旨いということではない。

 この獺祭の誕生までに、今抱えている経営の問題を克服できるヒントがあるのではないかと考えている。

 次回はそこに触れて行きたい。