第473回 価格設定と値上げ
アベノミクスの影響なのか消費の増える傾向の中、一方で円安や新興国の需要増などによって食料品を筆頭に様々なものが値上げの傾向にある。
また、昨今の消費税の増税など、いい話題と厳しい話題とが入り混じる中、価格ということについて考えてみたいと思う。
突き詰めていくと、利益を上げるためには、売上を伸ばすか、経費を下げるか、またはその両方かという3パターンしかない。
そのうち、売上に関していえば、売上を伸ばすには数量を増やすか、単価を上げるかという方法になってくるのであるが、問題は単価の設定方法である。
とくに旅館商品の場合、そのサービスに対し単価が設定される。
もちろん料理などの場合仕入れ値から逆算しその単価は比較的設定しやすいのではあるが、それはあくまでも経営サイドの話であって消費者サイドの話ではない。
以前この場で記載させていただいたハウステンボスを見事に再建させている澤田氏の話を引用させていただきたい。
澤田氏は元々、HISやスカイマークといった企業の創業者で、いずれの企業の特徴も、他の同業他社にくらべ価格設定が低い、つまり安価に設定しそのパフォーマンスでシェアを伸ばしてきた企業である。
そんな澤田氏がハウステンボスの再建に乗り出した際に、同じように入園料の価格を下げ来場者数を増やすといった手法に着手した。
通常の営業価格よりも下げたプランを様々用紙、中には夕方以降は入園料を無料にするという手に打って出たのである。
その結果、来場者数はどうなったかというと、大きな変化は見られなかったとのことだ、入園料を無料にしても。
現在ハウステンボスは創業以来18年連続だった赤字から脱却し、今期は最高収益をあげ経常利益ベースでは本体であるHISを上回るとの話だが、その要因は来場者数が年々右肩上がりに伸びているということと、そして、価格は今は下げていないとのことだ。
ではなぜ、価格を下げずに来場者数を伸ばしているのか。
それは、ハウステンボスの付加価値、訪問することによって得られる満足度の問題なのである。
偉そうな言い方で恐縮だが、ハウステンボスはお金を払ってでも行きたいと思わせる場所なのである。
以上のことより考えるに、価格は消費者目線で、お金を払ってでも味わいたい、経験したいと思わせるものに対する対価なのである。
当然のことながら、価格を上げるということは至難の業ではあるが、それに見合う付加価値を提供し、それ以上の満足度をお客様に味わってもらうということをしっかり構築すれば、できなくはない大きな手法なのではないだろうか。