第474回 相続税の話

 最近、よく『相続税対策』といった文字を目にする。

 というのも、2015年1月1日より、相続税が大幅な改正になり、今まであった相続税計算の控除額が大幅に引き下げられる。

 つまり、感覚的には増税ということになる。

 そのため、相続税対策をしておく必要があるということで、マスコミを始め様々なところで取り上げられている。

 実は会社経営にとっても非常に密接な関係にある相続税について少し触れて行きたい。

 本来的、会社が法人であれば、会社の資産は会社の物であるため、その部分については相続税というものは発生しない。

 しかし、個人の相続税を考える際に会社と密接な関係にあるものを2つほど紹介していきたい。

 税法上、様々な表記・名称があるが、ここでは、わかりやすくするために簡素な表現を用いることをご理解いただきたい。

 まず、一つ目は、科目の名称は様々ではあるが、その他借入金、つまりは、社長からの個人的な資金提供の部分である。

 会社の運転資金や資金繰りといったものが厳しきなった場合、社長の個人財産を会社に入金するケースである。

 これは会社としては負債と言いながらも、実際の現場での返済の優先順位としては低い。

 また、役員報酬を設定しながらも受け取らなかった場合、役員借入金として同じような処理になる。

 この借入金は会社からすればありがたいものなのだが、会社から返済してもらう権利という形で個人では財産となり、万が一の場合では相続財産となってしまう。

 中小企業の場合、この部分は非常にケースとして多く、見逃してしまいがちである。

 もちろん、対策や方法は様々あるので、会社に多く資金投入している社長は注意する必要がある。

 もう一つは、自社株ということである。

 自社の株の額は、資本金の出資額ではない、会社の今持っている資産・財産によって変動するものなのである。

 特に業界の体質的に、ホテル旅館業界では、借入金の額も大きいものの、土地や建物といった資産を多く所有しているため、自社の株の評価額はびっくりするほど高くなるケースがある。

 その場合、社長がこの株を後継者、身内に譲る際に、やはり財産の移動が発生し、万が一の場合は相続税大正となってしまう。

 いずれも、会社の事業承継の際によく見かける案件である。

 ゴーイングコンサーンに基づき、会社を存続させなければという観点から考えるに、事業承継問題は優先順位の高い問題でもあり、同時に経営者個人と考えた場合でも、家族の為にしっかりと事業承継、相続のことを考えて行かなければならないだと思われる。