よく耳にする、無駄な経費をなくせという声、コストを意識するうえでホテル・旅館に限らずどの企業でも当てはまり、意識し、徹底的に取り組んでいる。
前々回に書いたが、コスト、いわば原価と固定費を下げるということは企業の収益向上にもつながり経営としては一つの大きな経営手法であることは言うまでもない。
しかし、このコストの部分は両刃の刃な部分もあり、一歩間違えると自分自身を傷つけてしまうかもしれない危険性を秘めている。
そこで、今回はコストについて触れていきたい。
まず、私自身コストを考える際に最も後回しにするものが“人件費”である。
固定費の大きな部分を占め一見するとこの部分のコストカットが一番インパクトが大きいように思われる。
しかし、実際に給料を減らしたり、人員を整理したりする場合経営の数字の上で出てくることよりも大きなインパクトがおこる。
それは、小さなコストカットでも同じである。
コストカットの要は会社に関わることか、経営陣に関わることか、従業員に関わることかという部分である。
そのため、コストカットを行う上で、従業員に関わることは後回しにする方がよいと考える。
例えば、節電を声を大にして提唱し、事務所の冷房を切る、または温度を上げる等の対応をしたとしても、役員室や社長室にはその規定を適用しないといった場合、小さなことかもしれないがそんな小さなことで不満が高まってしまう。
そのため、『まず隗より始めよ』ではないが、まずは自分自身に係るコストの見直しから手を付けること、そして、それが行われたうえで従業員に関わるコストを見直し、最後の最後に人件費ということが望ましいと思っている。
なぜなら、そこには見えない“空気”というものがあるからである。
別の言い方をすれば“モチベーション”などと呼ばれている。
昔はよく従業員満足度を高めることが顧客満足度につながるという考え方があって。
私自身は、そこまでとは思わないが、従業員のモチベーション、やる気によって、特に接客業に関してはお客様への対応、そしてその後の評価は大きく変わってきてしまう。
当然のことながら、数字ではなく、感情のある人間が行うからだと思う。
コストカットを行う上で質を下げないようにという話はよく耳にする。
もちろん、その部分ももちろん大切であるが、それ以外の部分、特に表に出ない“モチベーション”という大きなインパクト効果も考え、繰り返しになるが『まず隗より始めよ』、コストカットを考える際は、まず自分の身から、そして、社内環境にも配慮し慎重に。
絶対に無計画に取り組みやすいことからすぐ行うことは避けるべきである。
| 2013年10月16日|
先週、利益を上げる方法としては4つしかないとお話しさせていただき、先週は見えないコストということで、営業戦略をしっかり立てなければというお話をさせていただいた。
さて、企業を経営していくうえで、経営を分析し、その中の指標の一つに損益分岐点というものがある。
これは、コストを変動費と固定費に分けて考えた上で、いくら売上れば収支が一致するかを求めることであり、この損益分岐点売上以上の売上を上げれば、数字の上では利益が出るという点である。
非常に便利で使いやすいのではあるが、厳密な数字を出すことが難しいのが難点である。
そのため実際の現場では、売上は損益分岐点売上を上回ったが、赤字だったということがある、それはなぜなのか。
単純な話、大きく考えて売上は2つの側面から考える必要があるからである。
では、売上を考える上でとらえる大きな2つの側面とは何か。
1つは“単価”でありもう1つは“数量”である。
これが売上という大きなくくりで一つにされているから見えなくなってしまっているケースが多いのである。
ホテル、旅館で言えば、単価は“平均総消費単価”であり、数量は“宿泊人数”または“宿泊組数”でとらえるのが望ましいのではないだろうか。
そのため、売上を伸ばそうと考えた際に、目標数字に対しての単価設定を高くして伸ばすのか、宿泊組数を増やして伸ばすのか、2通りの方法がある。
ここで重要なことは、単価設定を高くした場合、宿泊組数の減少があるかもしれないということをあらかじめ想定し、シミュレーションの上、何人の組数は確保しなければいけないのかという目標人数を再設定すること。
そして、宿泊組数の増加し目標売上達成を目指す場合は仕入等それに係る経費の変動費部分も変化するということである。
では売上を伸ばすには単価と数量をどのようにしたらよいのかということだが、これは、各ホテル旅館の特徴・財務状況・環境によって様々であるが、どちらか一方だけでよいというわけではない。
この2つの側面からのアプローチを同時に行い、どちらの方が取り組みやすいのか、そして、どちらの方が財務に与えるインパクトが大きいのか、それを比べることによって今自社内で取り組まなければいけないこと、単価を上げるには、数量を増やすには、そして、それの結果として目指す目標数字はどこなのかが決まってくる。
最後に私も含めてではあるが、漠然とした努力はいつか疲弊してしまう。
そのため、根拠に基づいた目標、ゴールを定め、それに向かって走っていく、そして達成感を味わう。
この体験こそ、売上を伸ばすためには必要不可欠である。
| 2013年10月08日|
利益をあげるためにという課題は、どの業種にも共通する営利企業なら目指すべき姿であるが、これがなかなか難しいのが現実であり、なかなかビジネス書やコンサルタントの言うようにいかないのが正直なところである。
しかし、発想を変えてみると、利益の上げ方は4つパターンしかないのである。
1、顧客数を増やす。
2、単価を上げる。
3、原価(仕入)を下げる。
4、コストを下げる。
並べてみると、さも当たり前なことばかりではあるが、この大きな表題を自社に落とし込むことが難しい部分であり、またこの中のどれか一つを行えばよいというわけではなく、4つ同時に行っていく方法が最も望ましいのは言うまでもない。
大切なことは、この中で、自社の持つ限られたエネルギーを注ぐかということである。
その場合、自社の中で、利益シミュレーションを行ってみて、インパクトの少ないものほど取り組みやすいという様々な指標がある。
しかし、一般的には、1番は顧客数が取り組みやすく、最も難しいことはコストだと考えられている。
さて、これからのシリーズでは、利益を上げるためにはというこの4つのパターンを触れていきたいのだが、始めに難しいコストからふれていくことにする。
コストは切れるものは切るという単純なものは除き、実は下げることが難しく、徹底的に行ったが故に職場環境が悪くなり、それが業務効率、従業員意識の低下、ひいては顧客満足度を下げるという最悪のケースも珍しくない。
今回は営業コストということについて考えていきたい。
営業コストで常に意識しなければいけないことが『費用対効果』ということであり、営業の現場では日夜言われ続けている話である。
この営業にかけるコストを厳密に考えたときに、まず、旅館の戦略をしっかり把握する必要がある。
つまりはターゲット層をしっかり決めるということである。
例えば、自旅館はどちらかと言えば若者向けの旅館を目指していきたいという旅館があった場合、当然料理や客室にはその演出が施されるのだが、営業の現場ではどうであろう。
若者は旅行雑誌を購入するであろうか、購入するとしたらどのような雑誌なのかをしっかり把握し、同じコストをかけるのであれば雑誌よりもインターネット広告の拡充化や、SNSの利用などに重きを置くべきではないか、といったことである。
当たり前のことではあるが、これがなかなかできていない旅館が多いのが現状である。
以前も書いたが、自旅館をしっかり把握し、ターゲットを明確にし、その戦略を基にマーケティングをしっかり行い、そしてコストをかける。
これもまた、無駄なコストの削減の上級手段かもしれない、いや、私は第一歩であるべきであると考えている。
| 2013年10月01日|
先日のこんな話があった。
お客様が部屋に髭剃りを洗面所のコンセントに指したままお忘れになった。
さて、どのように対応したらいいのか。
ここでキーポイントになるのは『連絡をする・連絡をしない』という問題である。
いずれが正解であろうかは、様々な見解があるが、小生は『連絡をしない』が正解であると考えている。
確かに、困っているお客様に対し、予約の際に連絡先を頂いている以上、連絡を差し上げた方が親切で、丁寧ではないかという考え方もあるのは事実だし、その通りだと思う。
しかし、お客様が宿泊している理由までは知らないため、それが原因で万が一にもトラブルになることはないだろうか。
数少ない限られたことなのかもしれないが、連絡することでご迷惑をおかけするかもしれないのであれば、私は連絡をホテル・旅館側から差し上げることはもちろん個々のケースによって様々なあるにせよ、するべきではないというマニュアルが正解なのだと考えている。
という話をしていたら、質問があり、携帯電話の忘れ物の話になった。
同様に携帯電話をお忘れになったお客様がいて、その電話が鳴っている。これは電話にでるべきかでないべきかと。
同様に、電話の外線がかかってきた場合などもある。
一つ一つの出来事によってマニュアルを作ることは大切なことだが、大変な時間を要する。
大切なことはするべきかやめるべきかの判断基準を明確にすることである。
さて、ここで思うことは、判断基準とはなんなのかという原点である。
ホテルではプライベート空間を演出することは非常に重要とされており、接客担当がお客様の部屋を訪問することは呼ばれない限りはない。
しかし、旅館では接客係が部屋にお通ししたり、部屋に布団を敷くために中に入ったりと、様々な場面で空間に立ち入ることがある。
またお客様と会話し、その中で旅行目的など聞く場面もある。そこにホテルと旅館の大きな違いがあるのだと考えている。
始めに提起した問題の判断基準であるが、お客様の旅行する理由はさまざまである。
そのために、万が一ご迷惑をかけてしまう場面が考えられるのであればそれは避けなければいけない。
そして、マニュアルでは、全員が同じことをするべきなので、そうあるべきである。
しかし、お客様と直に会話し、コミュニケーションが取れた上であれば、私はその限りだとは思わない。
一定のサービス水準を保つためには、最低限のことをカヴァしたマニュアルが必要である。
しかし、それを超えたところに、本当の意味でのホスピタリティがあり、親切やおもてなしがあるのではないかと感じた。
近所付き合いや職場での会話が減っている今、コミュニケーションを取ることができれば、マニュアル以上の、いわゆるホスピタリティが提供できるのではないだろうか。
| 2013年09月24日|
温泉旅館の親父というと語弊があるかもしれないが、その一面も備えつつも、当然のことながら、温泉旅館を経営する経営者である。
なぜこのような話をするのかと言えば、経営者という立場を忘れがちなのではないかと思うことが最近多い。
そこで、経営者として大切なことを確認していきたい。
第一に考えたいことは、経営者は常識人たれということである。
かつて評論家の竹村健一氏が雑誌やマスコミでよく使う言葉に、「日本の常識・世界の非常識」というのがある。
一々「ごもっとも」と、テレビに向かって肯いている小市民であるが、この「常識」という言葉、今、実に蔑ろにされている感が強い。
竹村氏の言う「常識」とは意味合いが若干異なるが、常識の中に、「礼儀」「作法」「慣習」「しきたり」「教養」「マナー」…こんな言葉を含めるとすれば、今日の日本の中で、正に「常識」なるものに大いなる異変が起こりつつある。
つまり嘗てあったはずの常識なるものが全く通じないし、当たり前が当たり前でなくなっている。
しかもこの傾向は、年齢の老若関係なく、また学歴、収入の高低、地域の別なく、全日本的に蔓延しているようで、社会学者の如く、時代変化の一現象というべきか、善悪の判定は別として、何とも摩訶不思議な国になりつつある。
旅館や料亭、もちろん家庭にも「日本間」がある。
日本間には必ず上座・下座が決まっている。
もっと言えば日本間に限らず、会議室や応接室にも、自動車にも、エレベーターの中にも上座・下座の区別があるについては、これぞ究極の「日本の常識」である。
そんなことお構いなしに、遅れて入ってきた人が一言の礼なく、どかどかと上座に鎮座するに至っては、開いた口が塞(ふさ)がらない。
セミナーや会議、話す方も聞く方も、もちろん真剣勝負。
そんな時必ずと言っていいかもしれないが、携帯電話の呼び出し音。
あれほど何回も注意したにも拘らず、「もしもし」なんて、電話に出る受講者がいる。
時代がどう変わろうと、やはり「嘆かわしい」と思っている。
「常識」という言葉は、身上の人に対する敬意、年長者への思いやり、周りの人への配慮、環境や社会に対する心配りから成り立っている。
これが美しい日本の風土や歴史に支えられ、日本人としての「プライドと教養の証」として、大きな誇りだったはずである。
教養のない者が、人の上に立てない歴史的証明があるように、経営者たる者、誰に対しても恥ずかしくない常識を身に着けるべきであり、常識なしでは、世界に向けての貢献など、出来る筈がない。
まずは、日本人としての誇りあるアイデンティティを、常識を再考することで、見つめ直してみたいものである。
| 2013年09月17日|